女性社員セミナーを2段階で実施、女性管理職の社内ネットワーク形成とキャリア意識を向上

プロジェクト活動で産休・育休取得者が年間10名→25名に増加

「くらしに、ららら。」をキーメッセージに消費者のニーズに応え、ホームセンター業界首位の売上を誇るカインズ様。従来型の小売業から製造小売業へと変貌を遂げるなかで、店舗のパートスタッフの声をPB商品の開発に積極的に取り入れるなど、女性の力を経営に活かしてこられました。2014年からは女性管理職の育成に着手。女性社員の戦力化に本格的に取り組まれています。

「ホームセンター業界はもともと男性社会。当社も例外ではなく、過去には正社員の女性比率は10%程度と、男性中心の時代が長く続いていました。最近は女性の採用を強化し、会社全体としての女性比率は20%近くにまで改善。しかし、店舗では女性の正社員はまだ少ないのが現状です。一方で、商品開発に女性目線を取り入れて他社と差別化することがより一層求められるなか、女性の活躍促進が重要な課題になっていました。

そこで、2010年にワーク・ライフバランスプロジェクトを本社内に設立。各部署の社員を男女混合で任命した7名のチームで、月1回の議論を重ねました。まず取り組んだのは、女性が長く働ける環境づくりです。店舗の営業時間が長い、土日に休めないといった小売業の特性上、結婚・出産を機に退職するケースが多く、女性の離職率が高くなっていたのです。

そうした状況を改善するべく、出産・育児の支援制度を拡充しました。例えば、育児短時間制度は法定では小学校就学前までのところを、小学3年生の学年末まで適用を延長。男性社員も配偶者の出産時および退院時に前後2日間の休暇が取れる制度を導入しました。また、制度の周知不足を解消するため、冊子『ワークライフ支援ガイドブック』を制作して社員に配布し、社内報にも定期的に制度紹介を掲載。店長会議時に人事が制度について話す、男性管理職を集めて出産・育児支援に関するVTRを視聴するなど、社内の広報・啓蒙活動にも力を入れました」(長田様)

「こうした地道な取り組みを続けたことで、今では上司に妊娠を報告すると『産休はいつから?』と、職場復帰することを当然と考える会話が普通になされるように。プロジェクト発足前は産休・育休の取得者は年間10名に満たなかったのが、昨年度は25名が取得するまでに改善しました。取得者の3分の2は店舗の女性社員です。みな職場復帰して、育児時短制度を利用しながら店舗での勤務を続けています。ワーク・ライフバランス改善の取り組みはすぐには成果が出にくいものですが、継続することの大切さを実感します」(宮尾様)

孤立しがちな女性社員の"横のつながり"をつくる

「その一方で、プロジェクトで議論を重ねるなかで出てきたのが、女性社員が横のつながりを持ちにくいという問題です。一見すると、店舗には女性スタッフが多いように見えますが、そのほとんどはパート勤務者。もともと1店舗あたりの正社員が少ないうえに女性比率が低いため、女性社員はどうしても孤立しがちだったのです。そこで次のステップとして、女性社員を集めたコミュニケーションの場を持とうと。これが当社初の女性管理職セミナーに発展しました」(長田様)

女性セミナー(1)「ワイガヤ研修」で社内ネットワークを構築する

「当社初となった女性社員セミナーの第1弾は、店長やマネージャー、ストアチーフなどの管理職クラス48名を選抜して実施しました。目的は『社内ネットワークづくり』。日ごろ各店舗に勤務する女性社員がコミュニケーションを取り、つながる場にしたいと考えたのです」(長田様)

「コミュニケーション中心のワークが多いライフワークスさんのプログラムのお陰で、受講生の表情がすぐほぐれてやり取りも活発に。『女性管理職がこれほどいるとは思わなかった』という声がまずあがりました。年齢は30代から50代、新卒者やパートから登用された方などプロフィールはさまざま。パート出身者が若いプロパー社員に仕事と育児の両立の経験を話してくれるなど、コミュニケーションは想定以上でした。女性管理職ならではの悩みを共有できたことも大きかったようです。『2回目も実施してほしい』と参加者から声があがりました 」(宮尾様)

女性セミナー(1)の概要

セミナー名 女性のキャリアを考えるセミナー
日程 1日間
対象 女性管理職48名
※全国から選抜
プログラム概要 個人ワークやグループディスカッションを通じて、自分自身の働くことに対する価値観を知り、女性が働き続けることの課題や不安を話し合う

女性セミナー(2)管理職としての自覚とキャリア意識を高める

「第2弾は1回目の受講生のうち19名を対象に1泊2日で行いました。今回のプログラムで印象的だったのは、人生を俯瞰して仕事の位置づけを考える視点です。受講生から『自分の人生を豊かなものにするために、仕事も家事も育児もがんばると覚悟が決まりました』という声があり、ここまで意識が高まるものなのかと感動しました」(宮尾様)

「『社内にロールモデルがいないことを嘆くのではなく、自分たちがロールモデルになろう』と自立心が芽生えたことも大きな変化です。キャリア形成は、本人がそうしたいと心から思わなければ行動には移りません。第1弾のセミナーで意識のベースをつくり、第2弾でより深く働きかける。ステップを踏んだからこその結果だったと思います」(長田様)

女性セミナー(2)の概要

セミナー名 女性社員向けキャリアデザインセミナー
日程 1泊2日
対象 女性管理職19名
※全国から選抜
1日目
  • キャリアを振り返る
  • キャリア上の課題を考える
  • キャリアのためのマネープラン
2日目
  • 上司から学んだ管理職像
  • 管理職としての課題共有
  • 自分の強み、弱み分析
  • これからのキャリアを考える

今後の課題は、男性管理職の意識改革

「男性と同じ働き方では、女性がホームセンター業界に長く勤めることは難しい。私の体験からもそう思います。女性にとってのハードルは、いずれ会社が成長するうえでのハードルにもなるという危機感もあり、何とか取り除きたいと思います。その1つが、男性管理職の意識改革。次はこの問題に取り組みたいと考えているところです」(長田様)

「人が魅力的な企業にしたいとずっと考えてきました。これまでは研修といえば座学中心でしたので、ライフワークスさんのコミュニケーション中心のプログラムや本人の気づきを引き出すアプローチは、社内の教育訓練担当としても勉強になりました」(宮尾様)

この事例のまとめ

課題 事業の優位性を支えるために、女性社員の戦力化が経営課題に
製造小売業として発展を続けるには、商品開発に女性の視点を活かすことが不可欠。女性社員の定着を促進し、活躍できる環境をつくることが課題でした。
方法 出産・育児支援制度を整備・拡充した後、
女性の意識を改革するセミナーを実施

福利厚生制度を整えて社内を啓蒙し、女性が長く働ける環境を実現。そのうえで、女性の社内ネットワークを構築し、意識を改革するためのセミナーを実施しました。
成果 女性管理職のキャリア意識が高まる
「自分たちがロールモデルになる」「憧れの管理職像に近づけるよう努力する」など、 2回のセミナーを受けた女性管理職のキャリア意識が大きく高まりました。

取材日: 2014年11月5日

研修導入企業情報

株式会社カインズ 様

目的
女性の活躍推進
年代
20代 30代
業界
流通・小売

企業のご担当者様

人事部 勤労厚生グループ グループマネジャー 長田 利弘 様

人事部
勤労厚生グループ
グループマネジャー
長田 利弘 様

教育訓練部 フレンドリーサービス 推進グループ 宮尾 千春 様

教育訓練部
フレンドリーサービス
推進グループ
宮尾 千春 様

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