管理職と女性社員双方に研修を実施、職場でのコミュニケーションを促進
女性活躍支援の専任組織を立ち上げ、本腰を入れた取り組みを開始
「当社の女性活躍支援の歴史は長く、1983年から取り組みの記録が残っています。小集団活動で女性社員の業務改善に取り組んだこともありましたが、どの活動もいつの間にか立ち消えてしまう。そんなことが繰り返されていました。そうした中、2011年に総合職・一般職女性から選抜した数名に、ワーキンググループとして女性活躍支援に関する提言をしてもらったところ、専任組織を設けて腰を据えて取り組む必要があるという指摘を受け、これを機に2012年に人事部内に女性活躍支援グループを発足させたのです。
活動方針として『1.意識改革の推進、2.制度改正、3.インフラ整備』の三本の柱を掲げ、2012年度は立ち上げ期、2013年度は全社展開期、2014年度は制度充実期、2015年度は制度定着・意識浸透を進めました。といっても、最初から精緻な計画があったわけではありません。こうした活動は、思い通りにいかないことの方が多いものです。大きな方向性だけを決め、具体的な施策は現場の実情にあわせて、できることから手を付けていったというのが実際のところです。
インフラ整備でいえば、製造現場に女子更衣室や女子トイレを作ることから始めました。女性総合職の採用に総論では賛成でも、配属しようとすると『更衣室がない』と断られる。そうした事態をなくすために、私と吉田とで各事業所を訪ねて歩き、どのような設備やインフラが必要かを確認してリストアップし、人事部で予算を確保して整備していきました」(安尾様)
管理職と女性社員、それぞれの意識改革の必要性を実感
「並行して、女性活躍支援の必要性を理解してもらうために、2012年に部門長向け研修、2013年に管理社員研修を行いました。ただし、上から押し付けるような研修になっては、現場の理解を得ることはできません。そこで、当社と業種の近い製造業のダイバーシティ推進担当の経験をされた元理事の方をお招きし、当社の一歩先を行く取り組みをお話いただくというプログラムを企画しました。この段階での反応は、『一般論としては理解できる』というもの。ただ、製造現場の管理職は、ほとんど女性の部下を持ったこともない人ばかりです。『自部署には縁のない話』と、どこか他人事として捉える意識が根強くあることを感じました」(安尾様)
「2013年には、全女性社員に向けた研修も実施しました。全女性を対象にするのは初めてのことでしたので、その意味で会社の本気度は伝わったのではないかと思います。一方で、過去の歴史から女性社員の中には『きっと何も変わらない』という思いもあったはず。複雑な心境だったことと思います。
しかし、今回は経営トップ自ら女性活躍支援を優先順位の高い経営課題として捉えており、これまでとは会社の姿勢が違います。トップと現場との温度差を感じ、今後の施策に悩む悶々とした日々が半年以上続きました。そうした中でライフワークスさんに出会い、次の一手となる研修をご相談したのです」(吉田様)
女性活躍支援の先にある、真の目的を見据えて研修を企画
「女性活躍支援は、そのものが目的ではありません。支援を通じて、女性だけでなく多様な社員がいきいきと活躍できる組織をつくり、個人の能力が発揮される会社にしていくことが真の目的です。その観点でもう一つ問題視していたのが、人事制度の形骸化です。当社は約10年前に『役割資格制度』を導入し、目標管理を人事考課だけでなく人材育成に結び付けるための制度改定を行いました。しかし、今回の取り組みのなかで現場の話を聞くうちに、女性社員への目標設定や振り返り面談が十分に行われていない部署があることが判明しました。このことからも、上司を巻き込んだ研修を行う必要があると判断したのです」(安尾様)
研修の概要
プログラム名 | 女性活躍支援関連 管理社員研修 |
---|---|
日程 | 1日間(3時間) |
対象 | 管理職20名 |
プログラム概要 |
|
「現場の実情に合わせた研修」にこだわり、プログラムを精査
「具体的には、まず管理職に研修を行って意識を改革した後に、部下の女性社員に研修を行うという流れで実施しました。重視したのは、一連のプログラムの中で上司が女性社員に期待を伝え、女性社員は今後の目標を上司に宣言するというコミュニケーションのきっかけをつくり、職場での効果を持続させるということです。現場が抵抗なく受け入れられる研修にすることも、大切にした点です。ライフワークスさんからのプログラム提案を、事業所の人事担当者と共有して現場の要望をすくい上げ、細かな見直しを重ねました。研修がスタートしてからも1回終わるごとに振り返りを行ってプログラムに微修正を加えるなど、ライフワークスさんには無理もお願いしましたが、粘り強く応えていただきました。お陰で納得のいく研修ができたと感じています」(吉田様)
「また、研修は講師も非常に重要な要素です。同じことを話しても、誰が言うかで伝わり方や説得力、納得感が大きく変わります。その点でも、管理職研修と女性社員研修それぞれに最適な方を選んでいただきました。研修後の受講者の評価が高かったのは、講師の人選も大きかったと思いますね」(安尾様)
研修の概要
プログラム名 | 女性一般職研修 |
---|---|
日程 | 1日(6時間) |
対象 | 女性一般職20名 ※全一般職を対象に実施 |
プログラム概要 |
|
経営トップの強いメッセージを後ろ盾に、さらなる推進を目指す
「今回は、本社の女性社員向け研修の冒頭で社長が自らメッセージを伝えました。その他の研修では社長のメッセージをビデオレターにしたものを上映しました。現場の社員がトップの言葉に直接触れるというのは、これまでの研修にはない異例のことです。そのインパクトは大きく、管理職と女性社員自身がそれぞれに、会社の本気度を強く感じたことと思います」(吉田様)
「我々が目指すのは、多様な個人の能力と意欲が引き出され、社員一人ひとりがいきいきと働ける組織を実現することです。女性社員に限らず、障害のある方や外国人の方、介護と両立する方などのほか、60歳の定年以降も雇用を継続するシニア社員の活躍支援も大きなテーマ。ライフワークスさんとは、ともに取り組む仲間として、今後もさまざまな提案をいただければと思います」(安尾様)
この事例のまとめ
課題 | 女性活躍支援を「自分事」として捉えるための意識改革が課題 管理職は総論賛成、各論は「自部署とは縁のない話」と距離を置いた見方。女性社員も改革の実現に半信半疑。「自分事」として捉えてもらうための意識改革が課題となっていた。 |
---|---|
方法 | 管理職と女性社員それぞれに働きかける「ダブルアプローチ研修」を実施 研修の課題を通じて、管理職と女性社員のコミュニケーションが促進される仕掛けを盛り込み、研修後の効果の持続性を重視してプログラムを設計した。 |
成果 | 管理職と女性社員のコミュニケーションが徐々に活性化 双方に、これまでになかった気づきがあったことが報告されており、女性社員の間にも前向きな姿勢が生まれるなど、徐々に変化が表れつつある。 |
取材日: 2015年7月22日
研修導入企業情報
住友金属鉱山株式会社 様
- 目的
- 管理職の育成力強化 女性の活躍推進
- 年代
- 40代
- 業界
- メーカー(toB)
企業のご担当者様
人事部
人材開発担当部長
海外人事室長安尾 浩和 様
人事部
女性活躍支援グループ
リーダー吉田 成美 様