「行動変容」につなげるキャリア越境学習プログラムの実施
「キャリアオーナーシップ」醸成を目的に、年代別研修を導入
ボストン・サイエンティフィックはグローバルで約29,000名の従業員を有する世界最大級の医療機器メーカーであり、低侵襲治療(インターベンション)に特化した革新的な医療機器を提供し続けてきました。しかし、市場を取り巻くビジネス環境がより複雑化する今、当社が患者さんや医療従事者、そして社会のさらなるニーズに応えていくためには、まず社員自身が変化に対応していく必要があります。そのためボストン・サイエンティフィック ジャパン㈱では、社員が主体性をもって自らのキャリアや働き方を選択しながらその能力を最大限発揮できる組織、制度、マインドセットの醸成を目的として、2016年より働き方や研修教育のあり方を大きく見直してきました。キーワードは「キャリアオーナーシップ」と「ラーニングオーナーシップ」。最大週3日の在宅勤務に加え、2019年には一部を除き研修の基本を「手挙げ制(社員応募型)」としました。また、オンラインをはじめとする多彩なコンテンツ提供へ転換し、多様な学びのニーズを時機を逃さず応えられるよう選択肢を拡大しています。
その中の1つの試みとして、2019年より年代別のキャリア研修を実施しています。当社には年齢や性別などの属性に関係なく人材を評価するカルチャーが根付いており、これまで年齢を切り口とする研修を実施していませんでした。しかし、キャリアの形成には少なからずライフステージが影響すること、今後も第一線でビジネスを担う30代から40代社員の意識変容は、人事戦略において重要な意味を持つことから、「キャリアオーナーシップ」を醸成するための「気づきの場」として30代と40代それぞれにキャリア研修を企画しました。
研修で醸成した意識を、行動変容につなげるための仕掛けを模索
(株)ライフワークス(LW)に研修支援を依頼したのは、当社の状況や課題をすばやく理解して的確な提案をしてくださる点に、コンサルティング力の高さを感じたからです。施策の企画にあたり当社では、キャリア研修で醸成した意識を行動変容につなげるために、研修後に何らかの仕掛けを用意したいと考え、キャリアコンサルティングなどいくつかの可能性を模索していました。そんななか、LWから「キャリア越境学習プログラム」のご提案があったのは、大きかったですね。当社は外資企業ではありますが社員の平均勤続年数は長く、社員にとっては、会社が「ホーム」になっています。勤続年数が長いこと自体は悪いことではありませんが、環境変化に対応していくためには、「他流試合」を経験し、自分の会社や業界に限らず視野を広く持つことも重要です。当社では、社内公募制度による異動が活発に行われており、自分の意思で新しい環境に身を置くチャンスが与えられていますが、研修としてベンチャー企業等の課題を解決する「越境学習プログラム」なら、今のキャリアを変えずに所属する組織の枠を超えた挑戦をすることが可能となります。組織の当たり前から離れ、行動変容を実践しようとする社員の挑戦を後押しする意味でも、魅力的な提案でした。
キャリア越境学習プログラムの概要
日程 | 1日 |
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対象 | 38歳〜45歳の希望者 |
研修内容 |
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40代キャリア研修の概要
日程 | 研修3日間 (約2週間の間隔で開催) 実施期間約2カ月 |
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対象 | 40代キャリア研修受講者から募った希望者 |
研修内容 | 1日目=スモールビジネスに関するレクチャー、越境先企業へのヒアリング、グループディスカッションなど 2日目=越境先企業訪問&ヒアリングなど 3日目=越境先企業への提案&フィードバック |
2019年は30代キャリア研修を1回、40代キャリア研修を2回実施。40代キャリア研修を受講した社員の中から希望者を募り、12名の社員が2チームに分かれて3日間の「越境学習プログラム」に参加しました。研修日の間には2週間程度のインターバルがあり、実施期間は約2カ月。研修実施日以外にもメンバー間でやり取りを行うというスタイルです。12名の枠に対し予想をはるかに上回る数の希望者から手が挙がり、社員のニーズの高さを感じました。参加者選定の基準は、まず自らの専門性を生かして越境先企業の課題を分析し、解決の提案を行うだけの知識や能力を備えていること。また、社歴の長さや社内での異動の少なさなど、変化対応力を養う機会を提供することの意義を踏まえて人事が選定しました。チーム編成にあたっては、ジョブレベルや職種などのバランスも考慮しました。
プログラム設計において特に慎重に検討したのは、越境先企業の選定です。「越境」によって学ぶプログラムとはいえ、当社とかけ離れた業種や文化の企業では、経験・スキルの応用が難しかったり、参加者のモチベーションが保てず、効果が半減するリスクもあると考えました。そこで、当社のテクノロジードリブンでスピード感が早いビジネス特性や、社会貢献意識が高いカルチャーを踏まえ、親和性の高い、テクノロジーベンチャー2社を越境先企業として選びました。
越境による「シェアードリーダーシップの体感」は大きな意味を持つ
「越境学習プログラム」参加者の反応は大変良く、「これまで受けた研修の中で最も面白かった」という声もあったほどです。プログラム実施前、人事では大きく4つの効果を期待していました。自分の慣れ親しんだ環境から一歩踏み出し、これまでの文脈とは異なるビジネスに向き合うことによる「視野の拡大」と「自己のポータブルスキルの発見」、所属や組織の異なる人たちと協働し、コミュニケーションを図ることによる「ダイバーシティの実践」、スモールビジネスの経営に直接触れることによる「視座の向上」です。実施後の参加者へのヒアリングによると、いずれも変化し続けていくことの必要性とさらなる貢献意識の高まりを得られたと感じています。
加えて、予想外の効果として、上下関係やあらかじめ決まった役割がない中で活動を進めていくことが「シェアードリーダーシップの発揮につながった」という声が数多くありました。「シェアードリーダーシップ」とは、一人ひとりが自らの強みを生かし、組織としての成果の最大化に貢献すること。その発揮は、まさに当社がキャリア開発支援の柱とする「キャリアオーナーシップの向上」と重なるものであり、プログラムの最大の効果はここにあると捉えました。参加者の評価も高く、継続して実施していきたいプログラムであり、今後は参加者が経験をシェアする場を設けるなど、より多くの社員の成長につなげられたらと考えています。
この事例のまとめ
課題 | 年代別キャリア研修で醸成した意識を、行動変容につなげる仕掛けを模索 「キャリアオーナーシップ(キャリア自律)」意識醸成を目的として希望者対象の年代別研修の導入を決定。研修で醸成した意識を行動変容につなげる仕掛けを探していた。 |
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方法 | 40代研修受講者から希望者を募り、「キャリア越境学習プログラム」を実施 体験学習による意識変容の場として「越境学習プログラム」を企画。効果として、変化対応力向上や「ポータブルスキルの発見」など参加者の能力のストレッチを期待。 |
成果 | 「シェアードリーダーシップの体感」をプログラムの最大の効果と評価 実施前に期待していた効果に加え、参加者の多くが「シェアードリーダーシップの体感」をプログラムの意義として挙げており、会社としても高く評価している。 |
取材日: 2020年2月14日
研修導入企業情報
ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社様
- 目的
- ミドル・シニアの活性化
- 年代
- 40代
- 業界
- メーカー(toB)
企業のご担当者様
人事本部長前田 敦子 様
人事本部
タレント・ディベロップメントグループ
プリンシパル青木 加奈 様