主体的な成長・キャリア開発と各種人事施策をかけあわせ、組織価値の最大化を目指す
約7,600人の社員で、広告事業、イーコマース事業、会員サービス事業など100を超えるインターネットサービス事業を展開するヤフー株式会社。市場競争の激化や働き方の変化を背景に、ヤフーがさらに成長していくためには社員の「主体的な成長やキャリア開発」を人事の大きなテーマの一つと捉え、そこに向けた人事施策として、「キャリアステージ別研修」と、管理職向けに「部下とのキャリア面談支援研修」を導入されました。
では、個々人が自身のキャリアに向き合い、上司も部下のキャリア支援を行うことを、どのように有機的に機能させたのでしょうか。具体的なお話をお伺いしました。
組織と個人の関係性の変化を背景に、社員の主体的なキャリア開発支援を強化
ヤフーでは「メディア」「eコマース」「金融」の3つの分野を中心に100を超えるインターネットサービス事業を展開しています。変化の激しい業界にあって持続的に企業価値を高めていくには、人的資本の最大化が不可欠です。
その実現に向けて当社では、2012年の経営改革以来、「社員の才能と情熱を解き放つ」を人事施策のコンセプトに一人ひとりの社員がやる気を持って仕事に取り組み、能力を最大限に発揮できるよう数多くの取り組みを行ってきました。社員の経験学習の促進を目的に2012年から続けている上司と部下の1on1ミーティング(1on1)もそのひとつです。
当社の人事制度の大前提には「会社と社員は対等な、イコールパートナーである」という考えがあります。会社は社員が働きやすい環境や選択肢を提供し、社員はそれらを活用して能力を最大限発揮し成果を創造する。その結果、会社と社員の双方が共に成長し続けていくことを目指しています。
キャリアについても会社が一方的に決めるものではなく、社員も主体的に自身のキャリア開発をしていく対等な関係性を目指しています。
そうしたなか、2014年に導入したリモートワーク制度「どこでもオフィス」の活用が2020年には加速するなど、社員の働く選択肢もさらに柔軟な形に変化しました。そうした変化とともに、社員一人ひとりにもより主体的に働き、学び、成長していくことが期待され、そのための人事施策のアップデートを進めてまいりました。
「主体的なキャリア開発」の第一歩は、社員の「自己理解」を深めること
社員の皆さん一人ひとりが主体的・自律的に考え、学び、成長していくためのファーストステップは、「自己理解」を深めることであると考えています。
なぜキャリアについて「自己理解」が大切なのか。キャリアは、未来だけを描くものではなく、過去から現在、現在から未来につながる「轍」のようなものであるのと捉えています。また、外的キャリアだけでなく自身の内的キャリア(働くモチベーションの源泉、仕事観など)を理解することが、より主体的なキャリア開発につながると考えています。内的キャリアは一見見えづらいものなので、自身の過去の経験を振り返ったり、現在の自分の強みや課題に向き合ったりすることで、点ではなく線で自身のキャリアを捉え、未来に向けてどのように行動すべきかと、全体図を描くことが大切だと考えています。
一方で、日常の業務においては、足元の成果に目が向きやすいこともあり、社員個人で自己理解を深めるのは簡単なことではありません。そこで「人財開発カルテ」という支援ツールにより、社員一人ひとりが自身のキャリアに向き合う機会を会社としても提供し、また、上司との「1on1」などを通じて中長期的なキャリアについて対話する仕組みづくりを行いました。
「人財開発カルテ」の施策自体は2012年から存在していたのですが、任意での活用となっていましたので、改めて、テレワークを中心とした新しい働き方にシフトした2021年より、年に1度の記入を必須としました。また、「人財開発カルテ」に記載された情報をもとに、上司と「1on1」などの時間を通じてキャリア面談を行うことで、本人のキャリアを組織としても把握できるようにデザインしました。
この仕組みの導入によって、個々人が自身のキャリアに向き合い、上司も部下のキャリア支援を行うこととなりましたが、キャリアは抽象度が高く、言語化することや支援することが難しいとの課題も浮上し、これらの課題解決に向けて実施したのが、株式会社ライフワークス(以下、ライフワークス)様とともに企画した「キャリアステージ別研修」と管理職を対象とした「部下とのキャリア面談支援研修」(以下「キャリア面談支援研修」)です。
キャリア開発の基盤づくりに「研修」を活用
上司向けの「キャリア支援研修」と全社員向けの「キャリアステージ別研修」は2021年より試行実施し、2022年度より本格実施しました。当社が毎月実施しているエンゲージメントサーベイやキャリア支援施策開始後の調査データも参照しつつ、ライフワークス様とともに更に課題を深掘り、整理していきました。
見えてきた課題としては、まずは社員一人ひとりが「キャリアとは何か」、「なぜ、主体的なキャリア開発が必要なのか」について、理解することが必要だということでした。
そこでまずは多くの社員に向けて理解を促進するために「主体的なキャリア開発」をテーマとしたeラーニングを内製して全社に展開しました。
その上でさらに自身のキャリアを深堀して考えたい社員のためにキャリア研修を企画・実施するという二段構えでアプローチしました。キャリアは仕事だけでなく、個人の人生全体と関わるものなので、ライフステージにより課題感も変化します。こうしたことから、社員が「キャリア」を考える意味や、「キャリア自律」の重要性を体感したり腹落ちしたりするキャリア研修を、キャリアステージの近しい年代別に実施することにしました。
併せて、上司向けには「キャリア支援研修」を通して、「部下に、何を、どのように支援することか」をわかりやすく伝えることによって、「人財開発カルテ」とキャリア面談が有機的に機能する流れを作りました。
キャリアステージ別研修
日程 | 2日間(1日目4時間半/2日目3時間半) |
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対象・参加人数 | 入社2年目の社員 (必須・計約250名) 20代(公募制・計70〜80名) 30代(公募制・計70〜80名) 40代・50代(公募制・計70〜80名) |
年代別コンセプト | 入社2年目:キャリアを考えるフレームワークを学ぶ 20代:自分のありたい姿に向けた現在地からの成長プランをデザインする 30代:組織の中核人材としてリーダーシップを発揮し、専門領域を拡大する 40代・50代:自分のキャリア資産を活かした様々なキャリア展開の可能性を考える |
部下とのキャリア面談支援研修
日程 | 1日(3時間) |
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対象・参加人数 | 管理職(公募制) |
プログラム概要 (一部抜粋) |
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「外的キャリア」のみならず「内的キャリア」で人財育成を考える
当社におけるキャリアの考え方の基礎をインプットする意味でも新卒入社2年目の社員には全員参加の研修を、キャリアステージ別研修と上司向けの研修は、課題感のある社員が手を挙げて機会を獲得できる応募制で展開しました。参加者からは「ほかの受講者からのフィードバックにより、意外な自分の強みが見えた(キャリアステージ別研修)」、「メンバーとのキャリア面談にどのようなスタンスで臨めばいいのかわかった(キャリア支援研修)」といったコメントが一定数見られ、企画側として期待する研修効果が得られています。
定量的にも、人財開発カルテをはじめとした一連のキャリア施策を導入後は、エンゲージメントサーベイの関連スコアの変動が見られました。
一連のキャリア施策により、社員一人ひとりのキャリアに対する考え方が言語化されてきているので、今後はそれらの想いと、会社が保持する多様な経験資源をいかに結び付けていくか、という部分により力を入れていきたいと考えています。
外的キャリアだけに着目すると、組織において個人が希望通りにキャリアを重ねることは難しい側面もあると思います。しかし会社と個人がキャリアについて丁寧な対話を重ね、内的キャリアも含めた理解が進んでいくことで、社員にとって納得感の高いキャリアを歩みやすい環境を創ることができると信じ、今後も様々なチャレンジを続けていきたいです。
この事例のまとめ
課題 | リモートワーク制度の利用が加速するなど、社員の働く選択肢が柔軟な形に変化した。そのため個々人が自身のキャリアに向き合い、上司も部下のキャリア支援を行うことが一層重要になったが、キャリアは抽象度が高く、言語化することや支援することが難しいとの課題があった。 |
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方法 | 新卒入社2年目の社員には全員参加の研修を、キャリアステージ別研修は、課題感のある社員が手を挙げて機会を獲得できる応募制で展開した。上司向けには「キャリア支援研修」を通して「部下に、何を、どのように支援することか」を伝え、部下とのキャリア面談で、部下の「人財開発カルテ」が有機的に機能する流れを作った。 |
成果 | 「ほかの受講者からのフィードバックにより、意外な自分の強みが見えた(キャリアステージ別研修)」、「メンバーとのキャリア面談にどのようなスタンスで臨めばいいのかわかった(キャリア支援研修)」といった参加者のコメントが一定数見られ、期待する研修効果が得られている。 |
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