コンプライアンスとは?意味や違反事例、遵守のための施策を解説
ビジネスシーンで耳にする機会の多い「コンプライアンス」という用語。企業経営における重要なテーマであるものの、単に法律を守ることを意味すると勘違いしてしまうケースも少なくありません。企業コンプライアンスを徹底し、社会や消費者の信頼を高めるには、多角的な視点でコンプライアンスの意義を理解することが大切です。
そこで今回は、コンプライアンスが持つ3つの要素や企業経営でよく見られる違反例、予防策について解説します。職場におけるコンプライアンス意識の向上や、違反を早期発見できる体制の構築をご検討の場合は、ぜひご一読ください。
コンプライアンスとは?
コンプライアンスは、「法令遵守」を意味するビジネス用語です。ただし、近年その意味は多様化しており、法律だけでなく社会的規範やステークホルダー(株主・社員・消費者・取引先・経営者など)の利益・要請に適した行動が求められています。本記事では 言葉の意味やコンプライアンス経営が重視される理由などを解説します。
コンプライアンスが持つ意味
企業活動におけるコンプライアンスの適用範囲は、主に「法令」「社内規範」「社会規範や企業倫理」の3つに大別できます。シーンに応じて意味が変化するため、3つの内どれに該当するかを考えると理解しやすくなるでしょう。
法令とは、すべての国民が守るように定められたルールのことです。法律や命令、条例、規則などが該当します。企業経営においては、会社法や個人情報保護法、独占禁止法などさまざまな法令を遵守する必要があります。
社内規範とは、自社のメンバーが守るべき独自ルールのことです。 社内ルールや業務規程などが含まれます。制定されている社内規範は会社ごとに異なりますが、常時10人以上の従業員がいる会社の使用者は、労働基準法第89条により就業規則を作成しなければなりません。
社会規範や企業倫理とは、明文化されていない社会常識や倫理・道徳、企業理念などを指します。企業経営では、ハラスメントやジェンダー平等などの課題に対して、法令だけでなく社会倫理に従った判断が求められます。
企業がコンプライアンスを重視する目的
企業コンプライアンスは、社会からの信用を獲得・維持するために重視されます。現代では、社会規範を逸脱した経営を行っていると、社会的信用の低下につながります。既存社員からの信頼を失う結果にもつながりかねません。そのため、企業の社会的責任(CSR)の一環としてコンプライアンス遵守への取り組みが進められているのです。また、信用の低下による売上減少や倒産などのリスクを小さくする目的もあります。
コンプライアンスが重要視されている背景
企業のコンプライアンスが注目される背景には、相次ぐ不祥事の発覚とその後の信用失墜や倒産があります。1990年代から2000年代にかけて、日本企業では不正会計や食品偽装が多発しました。その結果大企業に対する内部統制システムの構築の義務化などが制度化され、コンプライアンス経営の導入が重要視されるようになりました。
また、SNS等のネット普及による情報の透明化も影響しています。現代では企業に対する監視の目が厳しくなっており、法令違反や社会規範に反する行為はすぐに拡散され、信用の失墜や経営破綻につながるおそれがあります。コンプライアンス違反のリスクに対する認知が広がり、危機感が強まったことで企業コンプライアンスを見直すケースも増えているのです。
企業倫理・社会規範を逸脱してしまうような問題が社内で発生すると、既存社員のエンゲージメントや職場全体のパフォーマンスの低下にもつながります。コンプライアンス違反防止に努めましょう。
コンプライアンス違反の具体例
企業活動におけるコンプライアンス違反は、主に「労務」「情報管理」「法令」「会計」の4種類に大別できます。ここでは、それぞれの概要と具体例をご紹介します。
労務についての違反
労務に関するコンプライアンス違反には、労働者が雇用者から受けた不当な扱いや不利益で起こった精神的・肉体的な苦痛が当てはまります。長時間労働による労働基準法違反、サービス残業を黙認した賃金未払い、パワハラやセクハラなどが具体例です。労務コンプライアンスへの対応が遅れると、優秀な人材の退職や口コミの拡散による採用活動への悪影響、行政処分や刑事罰などのリスクが高まります。そのため、人事や労務の担当者には、従業員の労働環境に対する適切な把握が求められます。
情報管理についての違反
情報管理についての違反とは、秘匿性の高い情報の社外への流出や営業上知り得た知識による不当な取引などを指します。主な違反事例には、企業が保有する個人情報の漏えい・紛失、営業秘密を利用したインサイダー取引などがあります。情報管理に関する違反が発生すると、損害賠償をはじめとした金銭的な負担だけでなく社会的な信用も著しく低下し、企業の存続が難しくなるケースも少なくありません。健全な企業経営には、個人情報保護法や不正競争防止法に従った情報の取得・利用が求められます。
法令についての違反
法令に関する違反とは、企業活動に関連する法令に反した行為のことです。遵守するべき法令は業界や業種ごとに異なり、独占禁止法や消費者契約法、下請法など多岐にわたります。法令は全国民に向けて周知されていることもあり、違反に対しては厳しい目が向けられやすい傾向にあります。法令の中には頻繁に改正されるものもあるため、定期的にキャッチアップし、小さな違反も見逃さないようにすることが大切です。
会計についての違反
会計についての違反には、経理上の不適切な処理や会社資産の不正利用などが該当します。粉飾決算や架空請求、業務上横領などの行為が具体例です。会計に関するコンプライアンス違反は、自社だけでなく関連企業や取引先など多くの関係者に影響を与えます。信用の低下はもちろん、刑事責任の追及や株主による賠償請求の影響で経営が立ち行かなくなるケースも想定されます。会計違反が疑われる事例が生じた場合には、弁護士や第三者委員会のサポートのもと調査を行い、厳格かつ公正に対処することが重要です。
コンプライアンス違反が起こる要因別の施策の例
企業コンプライアンスを強化するには、違反の要因となりやすいポイントごとに施策を実践する必要があります。こちらでは、3つの要因別に具体的な施策をご紹介します。
従業員の知識不足
従業員の知識不足によるコンプライアンス違反を防止するには、業務マニュアルの整備や定期的なコンプライアンス研修・教育の実施が効果的です。経営陣だけでなく従業員一人ひとりがコンプライアンスについて理解を深め、問題意識を持つことで潜在的な違反を予見しやすくなります。また、マニュアルの策定や研修の実施で高まった危機意識を維持するために、定期的なテストや効果測定を行うのも良いでしょう。
予防できる仕組みの不足
機密情報に誰でもアクセスできる、不正を発見した場合に報告する場所がないなど企業の組織体制に問題がある場合は、違反を予防するための仕組みを整えることが先決です。例えば、情報へのアクセス権の管理方法を見直す方法が挙げられます。管理する情報の重要度に応じてアクセス権限を振り分けることで、情報の機密性がアップし、コンプライアンスの強化につながります。
そのほかには、違反が疑われる事例を早い段階で発見・対処するために、従業員が相談できる窓口を社内外に設置するのも効果的です。第三者による社外の相談窓口を設置するメリットには、人事・労務担当者の負担軽減や関係者の匿名性の確保などが挙げられます。
過剰なノルマ設定による不正行為の助長
コンプライアンス違反と知りながら従業員が不正行為をするケースもあります。主な動機には、目標達成時のインセンティブや過度なノルマ設定、上司からのプレッシャーなどがあります。目標や評価制度の見直し、マネジメント層の再教育などを通じて、違反によって得た成果は評価しない旨を明確にすることが大切です。また、上司と部下の関係にも目を向け、部下に課されたノルマについて率直に意見交換できる環境を作ることや、1on1ミーティングの実施など従業員の心理的安全性を確保する施策も求められます。
「コンプライアンス遵守に努めて社会や消費者の信頼を高めよう」
今回は、コンプライアンスの意味や企業活動における重要性、違反例、予防策についてお伝えしました。コンプライアンスの遵守は、持続的な企業活動のために取り組まなければならない、重要性の高いテーマです。コンプライアンス違反に該当する行為が発生すると社会的な信用が低下し、売上の減少や人材の流出、経営危機につながる可能性があります。研修の実施や相談窓口の設置、人事制度の見直しなどを通じて職場のコンプライアンス意識を高めましょう。組織内の意思統一を図るために、コンプライアンスオフィサーと呼ばれる専任の役職を配置するのも効果的です。
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この記事の編集担当
黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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