心理的安全性の高い職場とは?高める方法や高い企業の特徴を解説

現状の組織には、一人ひとりの社員が安心して能力を発揮できる環境が整えられているでしょうか。社員が遠慮して意見を言えなかったり、人間関係の問題から本来の力を出せなかったりすれば、チーム全体のパフォーマンスにも影響を与えかねません。

社員が安心して自然体で発言し合える組織づくりでは、「心理的安全性」を高めることが必要です。本記事では、基礎知識から自社の心理的安全性を高めるためのポイントまで解説するため、参考にしてみてください。

2022.07.26
コラム

心理的安全性の基礎知識

心理的安全性は、近年では企業のチームビルディングの観点でも重要性の高い用語として知られています。初めに、心理的安全性の意味や、言葉が注目されるようになった背景、組織文化にもたらす影響について解説します。

心理的安全性とは

「心理的安全性」とは、自分の考えや意見を安心して述べられる状況のことを指します。英語の「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」を日本語に訳したものです。企業においては、同僚や上司からの反応を恐れずに自然体のままで意見を伝えられる環境を指します。ビジネスシーンでも、心理的安全性の高い職場が求められるなど、日本企業でも浸透しつつある概念です。

心理的安全性の歴史

心理的安全性は、ハーバード大学で行動組織学を研究するエイミー・エドモンドソン教授によって提唱されました。エドモンドソン教授は心理的安全性を「チームのなかで対人関係におけるリスクをとっても大丈夫、とメンバーに共有されている信念のこと」と定義しています。

心理的安全性の用語が大きく広まったきっかけは、Google社の「プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)」という研究であると言われています。同研究では、Google社が生産性の高いチームの条件について分析を行った結果、心理的安全性を高めることが一つの条件であると発表されました。以降は、チームのパフォーマンス向上を目指して、多くの企業で心理的安全性の考え方が注目されるようになったのです。

心理的安全性が低いとどうなるのか

もし職場環境が心理的安全性の低い状態にあるとしたら、メンバー全員のパフォーマンスにはどのような影響が懸念されるのでしょうか。こうした環境に置かれた社員は、以下の4つの不安を抱えやすくなるとされています。

1. 無知だと思われる不安(ignorant)
2. 無能だと思われる不安(incompetent)
3. 邪魔をしていると思われる不安(intrusive)
4. ネガティブだと思われる不安(negative)

これらの不安を抱えている社員は、お互いに失敗や拒絶を恐れて発言を控えるようになります。その結果として、組織内で問題の指摘やミスの報告などが行われなくなるおそれがあるのが注意点です。また、コミュニケーション不足からチーム全体の生産性が低下したり、情報交換や提案ができずにイノベーションのチャンスが失われたりする可能性があるのも難点です。

心理的安全性が高い組織の特徴

心理的安全性が高いチームには、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、良好な組織によく見られる特徴や、心理的安全性の高さでもたらされる効果についてご紹介します。

活発なコミュニケーションが行われている

心理的安全性が高い組織では、発言を否定される心配がない状態なので、風通しが良く活発な意見交換が行われやすくなります。チームメンバー同士の会話が増えて、さまざまなアイデアが積極的に生まれやすいのが特徴です。相手の個性や価値観を尊重する組織文化では、複数の視点からの意見も気兼ねなく集まりやすくなるでしょう。

このようにコミュニケーションが活性化すると、組織全体での情報共有がスムーズになる点もメリットです。各メンバーの成功体験や課題を共有しやすくなり、挑戦を成功させやすい環境づくりができます。万が一ミスがあった場合もすぐに報告でき、迅速なフォローを実現しやすい点でも安心です。改善へ向けて協力しながらPDCAを回しやすくなります。

社員がパフォーマンスを最大限に発揮しやすい

心理的安全性が高い組織では、社員一人ひとりが安心して業務に取り組めます。個人が能力を発揮したり成長したりしやすい、前向きな組織づくりを実現可能です。仕事のモチベーションが湧き、やりがいを感じられる働き方ができるようになります。

また、他者との関係性に対するストレスが少ない分、仕事への集中力が上がって、よりポテンシャルを発揮できるようになるのも特徴です。こうして一人ひとりのパフォーマンスが向上すれば、チームの業務効率化や生産性アップにもつながります。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

人材の定着率が高い

心理的安全性が高い組織では、社員同士の交流で良好な人間関係が育まれた結果、チーム内の信頼関係が深まりやすい傾向にあります。自社への愛着が湧く人が多くなり、メンバーが組織での「居場所」を感じやすくなります。

こうしたエンゲージメントの高い状態は、人材育成にも多くのメリットをもたらすでしょう。たとえば、人間関係の問題をはじめとして、企業への不満を理由に退職する人を減らす効果が期待できます。離職率の改善や、優秀な人材の定着にも有効だといえます。

ビジョンの共有を円滑に進めることができる

心理的安全性が高い組織には、お互いに相手を理解しようと努める姿勢があり、議論の際も課題や目標に対する建設的な意見交換を行いやすい環境が整っています。より良い組織の方向性を目指して、スムーズにビジョンを共有できます。

リーダーがビジョンを共有したら、チームで一丸となり、やる気を持って業務に取り組むことができるのも特徴です。マネジメント層のリーダーシップが発揮されやすく、メンバーを率いて望ましい組織行動へと導けます。

企業が心理的安全性を高めるためのポイント

心理的安全性の高い職場を作るには、自社でどのような取り組みを行うべきでしょうか。最後に、組織づくりで心理的安全性を高めるためのポイントをお伝えします。

心理的安全性が高まりやすい仕組みを設ける

組織の心理的安全性が高まるまでには一定の時間がかかり、短期間で大幅に向上するとは限りません。まずは、社員が自由に発言しやすい場所や仕組みを作ることから始めましょう。その際は、1on1ミーティングの施策のように、社員が1対1で対話できる場を設けるのも一つの方法です。ほかにも、グループディスカッションの実施や、面談や会議以外の雑談をする機会を増やす施策なども効果的だと考えられています。

具体的な施策として1on1ミーティングを実践するなら、ぜひ以下の関連記事を参考にしてみてください。こちらでは、1on1ミーティングの基礎知識から、効果を高めるアプローチの手法まで解説しています。

全員にとって発言の機会がある場づくりに心がける

社内で特定の人だけが発言している場が頻繁にあると、「自分が話しても良いのだろうか」と感じて率直に発言しにくくなってしまう社員もいます。責任ある役割を担うマネジメント層は、特にこうした認識を持つことが大切です。新入社員や部下など、発言を控えがちな立場の人に配慮を忘れないようにしましょう。

社員にポジティブなリアクションをするメリットを認識してもらう

社内での発言内容に対しては、常にポジティブな反応で受け止める姿勢を持ちましょう。誰かが話したことに対してネガティブなリアクションを取ると、話しづらい雰囲気が作られてしまいます。NGな例として挙げられるのは「頭ごなしに否定する」「すぐに反論する」「発言を馬鹿にするような態度を取る」などです。内容に賛同しないケースでも、発言や質問をしたこと自体は認めるマインドが求められます。

協力し合える環境をつくる

社員が互いに連携し、知識やスキルを提供し合いながら高い成果をあげられるよう、協力体制を整備しましょう。そのためにも、まずはチームの目標を定めて、各自の役割を明確にしておきましょう。チーム内の情報をシステムで可視化したり、リーダーがこまめにフィードバックを行ったりして、連携を強化するのも有効です。

多様性を認める意識を持つ

多様な働き手が活躍する近年のビジネスシーンでは、多様性(ダイバーシティ)に対する理解が欠かせないものとなっています。職場で身近にいる人と価値観やライフスタイルが大きく異なることも珍しくありません。チームビルディングにおいても、一人ひとりが多様性を認める意識を持つことが重要です。各自の意識を変えるために、ダイバーシティ研修の実施を検討するという選択肢もあります。

評価基準や方法を見直す

既存の人事評価制度には心理的安全性の観点から課題がないか、改めて見直してみることも大切です。社員が低評価を恐れて発言を遠慮していたり、現状の評価方法への不満でモチベーションが低下したりしている可能性も考えられます。公平感のある評価を行うには、評価項目を明確にしたり、結果と併せてプロセスも評価したりすると良いでしょう。

社員の生産性がアップする心理的安全性の高い職場を目指しましょう

チームビルディングで重要な「心理的安全性」の基礎知識から、高めるポイントまでお伝えしました。心理的安全性は、生産性の高いチームを作る条件の一つであると考えられており、ビジネスシーンでも注目が高まっています。組織の環境を改善して心理的安全性を高めるには、人事部門やマネジメント層が積極的に仕組みづくりへ取り組み、社員へ働きかける必要があります。現状の課題に合わせて、自社に適した施策を検討しましょう。今回ご紹介したポイントを、ぜひチームビルディングでお役立てください。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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