研修計画の立て方とは?計画書や研修プログラムの作り方を解説
本記事をご覧いただいている皆さまの中には、社内研修制度を導入している企業様もいらっしゃるかと思います。
制度を運営していく中で、
「どのように研修計画を立てていけばよいかわからない」
「研修の成果が検証できない」
「研修を行っても社員がやる気にならない」
などの悩みはありますでしょうか。
今回の記事では、研修計画を立てていく流れに加え、計画を立てる上でのポイントをお伝えいたします。今後の研修計画立案・改善のヒントになれば幸いです。
1. 研修計画とは何か
研修計画とは、「主に企業や組織が、人材育成の取り組みや社員研修を予め計画すること」を意味します。研修と一言でいっても、研修にはかなり幅広い取り組みがあります。 職務に関する知識を学ぶ研修、マネジメントの立場へと昇進する人のための研修、キャリアを考えるための研修など、目的別に様々なものがあります。そして、人材育成に関する課題は複雑化しやすいという難しさがあります。人材育成の施策自体が、幅広い取り組みになりやすいからこそ、目的に応じた計画を立てていくことが必要となるのです。
2. 研修計画はなぜ立てるのか
研修計画は研修目的を達成するために立てますが、研修目的自体が、「経営理念や経営 戦略の実現に向けて、人事・人材育成の領域で達成すべきこと」に紐づいている必要があります。
研修計画を立てなければ、社内での認識の共有がしにくく研修効果も低くなります。研修を企画・実行する立場からも、混乱が生じるのではないでしょうか。また、研修を受ける従業員としても、「何のためにこの研修に参加しているのか」の理解が曖昧になります。受講に対してのモチベーションも低くなってしまうでしょう。
3. 研修計画の立て方と成果把握
研修計画を立てるにあたって、押さえたい流れを確認しましょう。
1)自社の人材育成の方向性と研修計画を連動させる
中長期的な人材育成の方向性と研修計画が連動していることが重要です。そのためには、一定の頻度で人材育成の方向性についての認識を、経営層とあわせておくことが大切です。
例えば以下のような項目については定期的にすり合わせをしておくとよいでしょう。
・あるべき人材像
・必要な人材の質
・必要な人材の人数量
・上記の具体的期限
その上で、対象層ごとにいつまでに、どんな人材がどのくらいいたらよいかという具体的な計画に落とし込みます。
2)研修内容の全体像を整理する
ある程度の方向性が見えたとしても、様々な対象層やテーマがあるなかで、どう優先順位をつけるかも重要です。
「どの社員層に対する施策の優先度が高いか?」
「予算は足りるか?社内講師で賄えるのか?」
などを見極め、実施すべき施策の優先順位や全体像を経営層とすり合わせていきます。特に、新しいスキル・知識習得の研修については、念入りに内容を設計しておくことも大切です。自社の人材育成方針や社会の変化にあわせて、一定期間(例えば年次ごとに)で見直していくことも必要でしょう。
3)対象層ごとの研修目的にあわせて成果をあらかじめ定義する
全体像が固まったら、個々の研修の目的と計画を立て、それぞれの「成果」を定義しましょう。研修は、計画通り行うのも大事ですが、その成果の測定も大事です。
以下に成果をどう定義するかの例を記載します。
・事後アンケートで、満足度5段階評価うち4.5以上、出席率98%以上を成果とする
・事後確認テストで、点数が80点以上を合格とする
・「受講者の2割が、次年度の課長昇格を実現する権利を得られる」などの条件を設け、昇格者を生み出すことを成果とする
その他にも、受講者が研修内でアクションプランを作成し、研修後のアクションを上司と部下ですり合わせて1on1でフォローしていくことも、成果に繋げる一つの方法となるでしょう。
1on1の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→1on1ミーティングとは?効果を高めるコツと今すぐ使える質問例
4. 失敗しがちな研修計画とは
研修計画において、失敗しがちな事例はあるのでしょうか?以下3点を挙げてみましょう。
1)経営戦略に沿った内容にアップデートされていない
経営計画、事業計画と連動していない例です。例えば、定期的なすり合わせができていないため、人材育成施策、研修が古いままになっているというケースです。現代は、VUCAの時代と言われており、変化する環境に適応した人材の育成が喫緊の課題です。もしも今現在の経営戦略に沿わない研修計画のまま運用されている場合、研修効果が薄れるどころか事業成長への貢献ができないリスクがあるでしょう。
2)研修計画の体系図が整理されていない
経営計画との連動はできているものの、それを全体像・体系図に落とし込めていない例です。研修の実施には、その内容・講師・内製/外部委託の決定など様々な要素があり、複雑になりがちです。そのため、体系的にまとめることがスムーズな運用にあたり重要でしょう。
3)PDCAサイクルが回っていない
計画を立てる目的は、研修の成果を最大化し、会社の経営戦略に寄与する組織の状態を作ることにあります。研修後のアンケートは実施するが改善に向けた計画の見直しが無く、 その場限りの研修となってしまうと、例え成果が出たとしても一過性のものとなってしまいます。「計画」とともに予め「成果」を定義し、研修後には課題と反省点を経営層とも話し合うことが必要でしょう。
5. 研修計画は内製か外部委託か
研修計画は、内製が良いのでしょうか、外部委託がいいのでしょうか?以下に、メリット、デメリットを解説していきます。
1)内製のメリット
内製のメリットは、「社内のリソースが利用できるので、コストがかかり過ぎない」「自社の独自ノウハウが確立できる」「外部に情報流出しない」「社内の繋がりが生まれる」などがあるでしょう。
一方で、「社外の視点や、最新の情報にアップデートされているかのバラツキが出やすい」「緊張感が生まれにくい」などのデメリットもあるでしょう。
2)外部委託のメリット
外部委託のメリットは、「客観的な視点で課題を捉えた上で施策実施ができる」「内製ほど社内のリソースを割かずに済む」
などがあるでしょう。
一方、「コストがかさむ」「ノウハウが社内に蓄積されない」といったデメリットがあるのも事実です。
6. 研修計画書の具体例
研修計画は、どのように効果的に立てていくか、何かツールのようなものはあるのでしょうか?おすすめのツールを紹介していきましょう。
1)職業能力評価基準
厚生労働省によると、「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したものです。平成14年度から、業種横断的な事務系職種のほか、電気機械器具製造業、ホテル業などものづくりからサービス業まで幅広い業種を整備しており、公的な職業能力の評価基準です。
この職業能力評価基準を、研修計画の全体像の構想に活用できるのではないでしょうか。
参考引用:厚生労働省
2)キャリアマップ
厚生労働省によると、キャリアマップとは、職業能力評価基準で設定されているレベル1~4をもとに、該当業種の代表的な職種における能力開発の標準的な道筋を示したものです。
キャリアマップでは、[1]キャリアの道筋と[2]各レベルの習熟の目安となる標準年数が一目で分かるようになっています。
研修の全体像を練る中で、キャリアの道筋、レベルの習熟レベルを参考とし、自社の研修計画に織り込んでいけるかもしれません。
参考引用:厚生労働省
3)職業能力評価シート
最後に職業能力評価シートです。厚生労働省が提供する職業能力評価シートは、人材育成に有効な示唆を得ることができるチェック形式の評価シートです。「自分の(または部下の)能力レベルはどの程度なのか」「次のレベルにいくには何が不足しているのか」を具体的に把握することができ、定期的にチェックすることで習熟度を把握することができます。
この評価シートも従業員の能力レベルをベンチマークする際等に有効な資料になるのではないでしょうか。
参考引用:厚生労働省
7.まとめ
研修は、経営戦略・人材育成戦略に沿った「研修計画」を立てて、常に全体像をアップデートしていくことが重要です。そのうえで、PDCAを回しながら成果に繋げていくことが必要になるでしょう。
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この記事の編集担当
黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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