組織コミットメントとは?従業員の帰属意識を高める方法

コミットメント(commitment)は、「約束」や「関与」などの意味を持つ英単語です。ビジネスシーンでは「責任を持って関わる」「結果を約束する」などの意味でよく使用されます。

そして、従業員が企業にコミットメントしている状態を表すのが「組織コミットメント」という言葉です。今回は、組織コミットメントの意味や種類、従業員の帰属意識を高めるための方法を解説します。従業員の定着率や生産性の低下にお悩みの場合は、ぜひ参考にしてください。

2023.03.01
コラム

1.組織コミットメントの意味と効果

組織コミットメントは、企業と従業員が長期的な関係を築くにあたり、重要とされる要素のひとつです。従業員の組織コミットメントが低いと、離職率のアップや生産性の低下などの問題につながる場合があります。こちらでは、組織コミットメントの概要や種類、従業員の帰属意識を高める方法を解説します。

1)組織コミットメントとは

組織コミットメントとは、個人が所属する組織に対して持つ帰属意識やその概念のことです。個人と組織の関係性を表す言葉のひとつです。

組織コミットメントは、企業組織においては従業員が持つ会社に対する帰属意識のことを指します。従業員が会社に対して抱く愛着や「会社に貢献したい」と思う気持ちを表す言葉です。

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2)組織コミットメントを高めるメリット

組織コミットメントを高めることで、従業員同士が組織の成果に向けて協力する意識が高まり、組織としての結束力が強くなるメリットがあります。社内におけるコミュニケーションが活性化され、新しいアイデアやイノベーションの創出、ナレッジ共有の促進などが見込めるでしょう。

また、従業員の組織コミットメントが高い状態にあると、貢献したい気持ちが高まることから働くモチベーションがアップし、それによって生産性の向上が期待できます。会社に貢献するために自発的に行動する人材が増えて、管理職や上司の負担軽減にもつながります。それらは売上向上にも寄与し、企業成長を加速できるでしょう。

そのほかには、組織コミットメントの高まりによって従業員エンゲージメントがアップし、従業員の満足度や定着率が向上しやすくなる点もメリットです。優秀な人材に長く貢献してもらうことができれば、採用や育成にかかるコストの削減や採用市場における競争力のアップにもつながります。

2.組織コミットメントの種類

組織コミットメントは、「情緒的コミットメント」「存続的コミットメント」「規範的コミットメント」の3種類に分類できます。続いては、それぞれの特徴について解説します。

1)情緒的コミットメント

情緒的コミットメントは、会社やメンバーに対する愛情や愛着に基づいて形成される組織コミットメントです。従業員個人の価値観と会社の理念や存在意義が一致していると、情緒的コミットメントは強くなる傾向にあります。

情緒的コミットメントが低下すると、「この会社の一員で居続けたい」という気持ちが失われやすくなり、早期離職の可能性が高まります。そのため、情緒的コミットメントが自然と芽生えるのを待つのではなく、企業からの働きかけによって育成することが大切です。

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2)存続的コミットメント(功利的コミットメント)

存続的コミットメントは、情緒ではなく損得に基づいて現状を維持しようとする状態を表す組織コミットメントです。得られる報酬や現在のポジションを踏まえ、組織に残りたいと考える思考から生まれるもので、功利的コミットメントとも呼ばれます。

存続的コミットメントは、損得勘定に基づいて形成されるため、福利厚生や労働条件などが影響しやすいのが特徴です。労働時間や労力に対して対価や報酬が見合わないと判断されると、存続的コミットメントは大きく低下するおそれがあります。

3)規範的コミットメント

規範的コミットメントとは、「所属している組織には貢献すべき」という考えに基づき、結束している状態を指す組織コミットメントです。理屈や理由などは関係なく、従業員が無条件で会社の決まりごとに従おうとする姿勢を表しています。規範意識の高い組織の構築や企業におけるブランドイメージの向上のために重要です。

規範的コミットメントが高い従業員は、現存のルールを遵守する意識が強いため、組織に対して自ら変化を起こしていくことが苦手という特徴を持ちやすい側面もあります。

3.組織コミットメントを高める方法

社員のモチベーションを向上させて生産性や定着率の向上を実現するには、組織コミットメントの状態を認識し、より良くしていく意識が必要です。そこでこちらでは、組織コミットメントを高めるための具体的な方法をご紹介します。

1)企業理念やビジョンの共有

組織コミットメントを向上させるには、企業理念やビジョンを従業員に示すことが大切です。自社にとって根幹となる考え方が広く浸透することで、従業員が同じベクトルで仕事に取り組めるようになり、組織における一体感の醸成につながります。また、企業が掲げる理念や経営戦略に沿って主体的に行動できる人材が増えると、組織全体の成長も期待できます。

企業理念やビジョンを共有するには、経営層からメッセージを伝える機会を増やす、上司と部下の1on1ミーティングで会社の方向性について話し合うなどの方法が有効です。

1on1ミーティングの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→1on1ミーティングとは?効果を高めるコツと今すぐ使える質問例

2)働きがいのある職場環境の実現

組織コミットメントの育成には、従来の働き方を見直し、待遇や職場環境を改善する方法も効果的です。例えば、男女ともに育児休暇を取りやすい環境の整備やフレックスタイム制の導入など、従業員が働きやすい環境を用意するのが良いでしょう。また、会社への貢献度を実績として評価する仕組みを構築できれば、従業員の情緒的・存続的コミットメントをさらに高められます。

3)適性に応じた配置や役割の付与

組織コミットメントは、従業員の配置や役割の見直しによって高まるケースもあります。具体的には、従業員自身の強みを活かせる職務に配置したり、仕事付与の際に期待や役割を的確に伝えたりするのが効果的です。従業員が自らの役割に意義を感じていると、組織内で得た経験を自身の成長に活かしやすくなります。そのためには、役割に応じた責任をともなう仕事を任せながら、期待を伝えることも大切です。

4)従業員間のコミュニケーションの活性化

組織コミットメントの強化には、従業員同士のコミュニケーションの促進も重要です。部署や役職に関係なく交流できる機会を設け、組織内での意見交換を活発に行うことで、社員の帰属意識が高まります。

また、同僚や上司と良好な関係を築くことができれば、従業員の情緒的・存続的コミットメントの向上が期待できます。上司・部下間では、1on1ミーティングなどを活用してコミュニケーションの機会を意図的に設定し、お互いを知ることが大切です。上司は部下の価値観や将来のありたい姿を理解しようとし、組織の目標と重ね合わせながら支援することで、部下の成長を組織の成果最大化につなげやすくなります。

4.組織コミットメントを高めて優秀な人材の離脱を防止しよう

今回は、組織コミットメントの概要や種類、従業員の帰属意識を高める方法をお伝えしました。組織コミットメントは、従業員のモチベーションをアップさせるだけでなく、組織力の強化や離職率の低下を実現するために欠かせない概念です。職場環境や配置の見直し、ビジョンの共有などの施策を実行し、組織コミットメントが高い状態を目指し、優秀な人材が長く働きたいと思える組織づくりを行いましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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