計画的偶発性理論とは?クランボルツ教授が提唱する主旨と行動特性
働き方の多様化やワークライフバランスの見直しが進んだ影響により、自分のキャリアと向き合う個人が増えています。
従業員のキャリア支援の一環として、キャリアデザインやキャリアパス制度を取り入れる企業も少なくありません。
しかし、IT技術の進化や社会情勢の変化などにより、キャリア形成に必要な将来の予測が難しくなっています。
そこでヒントとなるのが、偶然の出来事を自身のキャリア形成に活用する「計画的偶発性理論」と呼ばれる考え方です。
本記事では、計画的偶発性理論の基本的な知識や主旨、重視される行動特性について解説します。
1.計画的偶発性理論とは?
計画的偶発性理論とは、キャリアに関する行動理論の1つです。個人のキャリアは偶然の出来事の積み重ねによって決定されるという前提のもと、その偶然をチャンスと捉え活かすことで、自分のキャリアを良くしていく考え方を指します。
スタンフォード大学の心理学者であるジョン・D・クランボルツ教授によって提唱されました。
こうした計画的偶発性理論に対して、価値観や目標、コアコンピタンス(能力)を重視して自らの働き方を選択するキャリア理論は、「キャリアアンカー理論」と呼ばれます。
時代の変化にともない、将来を予測しにくい社会になりつつあるため、計画的偶発性理論に注目が集まっています。企業が従業員のキャリア支援に取り組む際にも取り入れられることがある考え方です。
2.計画的偶発性理論の主旨
計画的偶発性理論は、現在取り組むべき仕事を全うし、そのなかでの新たな出会いを大切にすることで良いキャリアに恵まれていくという考え方です。そんな計画的偶発性理論は3つの要点で成り立っています。こちらでは、3つの要点を詳しく解説します。
1)キャリアのターニングポイントの8割は偶然の出来事が影響する
1つ目は、個人のキャリアの多くは予想していない出来事に左右されるという考え方です。例えば、新しい仕事のオファーや突然の人事異動が自分のキャリアを変える転機になる場合があります。計画的偶発性理論では、このような予期していない出来事に対しても柔軟に対応することで、キャリアの発展につながるとしています。
外部環境の変化により、社会や企業の未来を見通しづらい時代になっている状況は、キャリア形成における偶然の出来事が多くなるひとつの理由でもあります。好奇心を持って新しい学習・体験の機会を得ていくことの重要性が上がっているといえます。
2)行動や努力によって、偶然の出来事が自身のキャリア展開につながる
2つ目は、偶然の事象に対して積極的にアプローチする姿勢を持つことで、自身のキャリアをさらに発展できるという考え方です。これは、積極的な行動や努力によって偶然の出来事からチャンスをつかむことの重要性を表しています。予想外の出来事をうまく活用することで、自身の選択肢の幅を広げられるでしょう。
なお、計画的偶発性理論はキャリアプランの設計自体を否定しているわけではありません。目標の重要性は認識しつつ、キャリアを成功に導くにはそれに固執して自身の可能性を狭めるのではなく、偶然のチャンスを活かそうとする柔軟な姿勢が大切であると説明しています。
3)新しいことへの挑戦によってチャンスが増える
3つ目は、自ら行動することでチャンスが増えるという考え方です。偶然の出来事は待っていても発生しません。失敗をおそれずにチャレンジし続け、自分自身でチャンスを増やす必要があります。
例えば、新しいスキルや資格の習得に挑戦したり、新たな経験を積んだりすることで、今後のキャリアにおいてチャンスが訪れる可能性が高まります。挑戦には一定のリスクがともなうものの、キャリアの発展にはある程度のリスクを覚悟したうえで自ら行動することが必要です。
3.計画的偶発性理論が重視する5つの行動特性
計画的偶発性理論によってキャリアを発展させるには、5つの行動特性を理解したうえで実践すると有効です。そこでこちらでは、各行動特性の意味や意識するべきポイントについてご紹介します。
1)好奇心
計画的偶発性理論の実践には、好奇心を大切に積極的に新しいことに挑戦する必要があります。好奇心を持ってチャレンジを繰り返すことで、予想していないチャンスに遭遇しやすくなるためです。
好奇心を育てるには、自分が興味のある分野に限らず、新しい学習の機会を模索すると良いでしょう。個人レベルでは、日ごろからニュースを確認したり、セミナーに参加したりする方法が考えられます。企業レベルでは、FA制度や副業、リカレントの制度など、社内外での挑戦を可能にする制度を整備するのも効果的です。従業員の積極的な行動や努力をしやすい環境づくりが大切です。
2)持続性
計画的偶発性理論では、興味を持ったことに対して努力し続ける持続性も重視されます。挑戦には失敗や挫折がつきものです。しかし、失敗や挫折を避けようとして挑戦をやめてしまえば、偶然の事象に出会うチャンスも失ってしまいます。時に思うとおりに進まなかったり、困難に直面したりしても、諦めずに継続することが大切です。前進し続けることで新たな出会いに恵まれ、自分のキャリアを展開するきっかけになるかもしれません。
3)楽観性
新たなチャレンジを繰り返すには、失敗をおそれずに前向きに考える楽観性も重要です。計画的偶発性理論は、事前に決めた計画通りにキャリアを進めるものではないため、不安に感じる場合もあるでしょう。そのような状況でも前向きな思考で行動することによって、新しい一歩を踏み出し続けることができます
4)柔軟性
計画的偶発性理論では、興味を持ったことに対して努力し続ける持続性も重視されます。挑戦には失敗や挫折がつきものです。しかし、失敗や挫折を避けようとして挑戦をやめてしまえば、偶然の事象に出会うチャンスも失ってしまいます。時に思うとおりに進まなかったり、困難に直面したりしても、諦めずに継続することが大切です。前進し続けることで新たな出会いに恵まれ、自分のキャリアを展開するきっかけになるかもしれません。
5)冒険心
予想していない出来事に遭遇するには、時にはリスクを取って行動する冒険心が必要です。結果が不確実な場合でもまずは取り組んでみることで、想定外のチャンスに出会える可能性が生まれます。万が一失敗しても、自分の意思でチャレンジしていれば得られるものがあるはずです。また、企業は挑戦しようとする従業員の行動に対して支援をすることで、従業員の冒険心を活かすことができるとよいでしょう。
4.計画的偶発性理論を理解して従業員のキャリア形成をサポートしよう
今回は、計画的偶発性理論の概要や主旨、重要とされる行動特性についてお伝えしました。予め立てたキャリアの計画に向かって努力することも大切です。しかし、社会情勢の変化によって未来の見通しが立ちにくくなっている現代では、偶然の出会いを積極的に創る行動や、訪れた機会を自らのキャリアに活かす行動が、未来のキャリアの可能性を拡げる場合もあります。企業は、従業員の新たな一歩を後押しするにあたり、計画的偶発性理論もヒントにサポートするとよいでしょう。
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この記事の編集担当
黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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