キャリアプランニングとは何か?キャリアプランニングシートと活用事例とは。

終身雇用制度が維持できない時代、社員のキャリア自律が重要になっています。健康寿命が延び、100年時代の人生設計が必要な時代でもあります。このような時代に、社員にとっても会社にとっても重要なことが、「キャリアプランニング」(キャリア計画を描く事)です。
社員一人一人が、自らキャリアプランニングを行っていくことで、主体的に自己分析に取り組むことができ、キャリア意識が芽生え、仕事に対する意欲が高まります。生産性向上や、企業価値向上につながっていくでしょう。
では、具体的に社員のキャリアプランニングをどのように進めていくのが良いのでしょうか?その進め方と、留意点をまとめております。
これから、キャリアプランニングを活用した仕組みを導入していていきたい企業様の参考になれば幸いです。

2023.05.30
コラム

1.キャリアプランニングとは

キャリアプランニングとは、その名の通り「キャリア」を「計画」することを意味します。

似たような概念として、キャリアビジョンがあります。キャリアビジョンとキャリアプランの違いについて解説すると、キャリアビジョンが、人生や仕事において、将来こうなりたいと思う「理想像」である一方、キャリアプランニングはより現実的に目指すべきゴールを考え、ゴールまで行きつくための「計画」を立てるものです。働き方が多様化する時代においては、企業は、社員一人一人の今後のキャリアプランニングをしっかり支援していくことが大事になってくるでしょう。

キャリアビジョンの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→キャリアビジョンとは?企業にとっての重要性や取り組みたいこと

2.キャリアプランニングのメリットとは

では、具体的にキャリアプランニングを実施するメリットとは何でしょうか?次の3点があると思われます。

1)人材育成計画の促進

まず、一番のメリットとしては、企業が人材育成計画を促進できることが挙げられます。一人一人に明確にキャリアプランを立てさせることで、社員自身は主体的に学ぶことができ、それをベースに社員一人一人の人材育成計画を綿密に立てることができます。

2)生産性向上

社員がキャリアプランを主体的に立て、会社側が、それを支援することで、社員のやる気を喚起することができるでしょう。結果として、仕事の生産性の向上を図ることにもつながるでしょう。

3)企業価値向上

社員一人一人が業務を効率化するだけでなく、キャリアプランニングに沿って業務推進できることで、社員個人の業績が上がり、組織全体としての業績向上にも繋がり、それが企業価値向上にも上がっていくでしょう。

3.キャリアプランニングの実施方法と留意点

では、キャリアプランニングは、どのように実施していくのでしょうか?また、どのような留意点があるのでしょうか?社員のキャリアプランニングの実現において、会社とのすり合わせも重要になります。可能な限り、仕組化をしていくことも大事になるでしょう。
以下にステップをご紹介いたします。

1)キャリアプランニングの実施をアナウンスする

まず、キャリアプランニングを行うタイミングを人事部門から全社員にアナウンスするのが良いでしょう。正式な実施通知を各部門、社員一人一人に出します。理想の頻度としては、年に1度または、半年に1度程度実現するのが良いでしょう。

2)キャリアプランニングシートやツールを準備する

キャリアプランニングは社員の自由記述に任せるより、社内独自の入力シートやWEB上での入力フォームを作成するなど、統一した方法を取ることをお勧めします。キャリアプランニングの目的と意義とともに、記入方法を人事部門から社員に伝えていくことが必要でしょう。社員が定例的にキャリアプランを記載し、毎年更新していくことで、実現に向けた取組みを進めやすくなるでしょう。

3)上司とのキャリア面談を促す

社員が作成したキャリアプランを、直属上司と面談し、すり合わせをする機会を持つことが大切です。キャリアプランを個々人の役割や会社からの期待と重ねあわせることで、仕事への意味付けも進み、成果に向けて力を発揮しやすくなるでしょう。

4)人事部門又はキャリアの有資格者との面談を促す

上司が、個人のキャリアプランニングをフォローしきれない場合もあります。社員が、社内在籍の国家資格キャリアコンサルタントなどのキャリア相談の専門家や、人事部門の担当者に任意で面談を申し出る制度が合っても良いでしょう。

このような一連のキャリアプランニングの仕組みには留意点があります。社員が意義を理解していないと、単なる「やらされ感」で行うことになり、せっかくの取組みを無駄にしてしまうことにもなりかねません。そうならないためには、人事部門や上司から、キャリアプランニングの意義と目的を社員に説明することが必要でしょう。

また、「キャリアプランニングをさせたら、転職してしまうのでは」という懸念を持つ上司もいるかもしれません。しかし、キャリアプランニングを話す習慣があることが、突然の転職を防ぐ信頼関係を得ることになるかもしれません。

さらにもう1点重要な留意点があります。社員が立てたキャリアプランニングを、会社側が尊重しないと「絵に描いた餅」になってしまい、逆に社員のモチベーションを落としてしまう懸念がある点です。もちろん、企業は社員のキャリアの要望を全ては受けきれませんが、キャリアプランと合わせて価値観や動機についても対話することが、ありたい姿を目指すためのカギになるでしょう。

4.キャリアプランニングシートでできること

次にキャリアプランニングシートでできることを考えてみます。キャリアプランニングシートの見本としてのお勧めは、厚生労働省も監修する「ジョブ・カード」です。もちろん、社内で使用する際に、これを見本に自社独自のキャリアプランニングシートに改変し、作成することも可能です。

ジョブ・カードとは、ジョブ・カード制度の総合サイトによれば、「生涯を通じたキャリアプランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールとして厚生労働省が様式を定め広く普及を進めています。キャリアコンサルティングなどの相談支援の場面で用いるには最適なものです。

<参考引用:ジョブ・カード制度の総合サイト

キャリアプランニングシートでは、自分の価値観、強み・弱み、仕事を含めた人生のキャリアプランを記入することができます。自身のキャリアの棚おろし、将来のキャリアプランを言語化に、積極的に活用しましょう。

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→ヤフー株式会社 主体的な成長・キャリア開発と各種人事施策をかけあわせ、組織価値の最大化を目指す

5.キャリアプランニングの活用事例

では、企業はキャリアプランニングを具体的にどのように活用できるのでしょうか?具体的な活用事例をいくつか挙げていきましょう。

1)社員の人事異動・業務アサインの参考にする

まず、キャリアプランニングを、社員の希望を叶える人事異動・業務アサインの参考とすることができます。例えば、管理職志向の社員には、経営や営業など幅広い経験をさせる事で、早い段階で、マネジメントの経験を積ませることもできるかもしれません。また、専門職志向の社員には、専門性の習得ができる部門で長く技術を磨きながら活躍してもらえるかもしれません。本人のキャリアプランとすり合わせながら業務アサインすることで、本人の仕事に対するモチベーション向上の効果もあるでしょう。

2)社員のキャリア志向の傾向を分析し、人事戦略検討に活かす

人事部門は、キャリアプランニングの全体傾向を把握することができます。例えば、育児や介護との両立を課題とする社員が多いようであれば、両立支援の人事制度や福利厚生を見直すことが、社員の中長期的な活躍を支援することに寄与しそうです。

6.プランド・ハップンスタンス理論とは

最後に、キャリア理論からのヒントを紹介いたします。ジョン・D・クランボルツ教授が提唱したプランド・ハップンスタンス理論です。プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)は、日本語では「計画された偶発性理論」と訳されます。20世紀末にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した理論で、これまでになかった偶発性とキャリア形成の関係を示すものとして注目を集めました。

主なメッセージとしては、「変化の激しい現代において、キャリアの8割は偶然の出来事によって形成されるが、逆に8割の偶然の出来事は、キャリア形成に役立てることができる」というものです。

キャリアプランニングも大事ですが、それに固執し過ぎることなく、刻々と変わる外部環境を柔軟に捉えることも大事でしょう。それゆえ、キャリアプランニングは、固定的に運用するのではなく、常日頃見直しをする機会を設けるなど、リプランニング(計画しなおし)する機会をつくることも大切です。

7.まとめ

キャリアプランニングは、キャリア自律が叫ばれる時代において、企業にとっても、社員一人一人にとっても重要な取り組みとなるでしょう。キャリアプランニングを描き、活かし、定期的に見直す。そしてそれを継続する仕組みがしっかり機能していれば、社員の成長や、それを通じた企業価値向上にもつながるでしょう。そのため重要なことは、社員がキャリアプランニングを立てて終了、とならないように、上司との面談の機会を持ち行動に移したり、人事部門側がフォローする仕組みも同時に必要となるでしょう。

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