オフジェーティー(OFF-JT)とは?メリット・デメリットと活用の具体例
オフジェーティー(OFF-JT)はご存じでしょうか?一般に実際の職場の外で行う集合型またはオンライン研修のことを指し、職場で行うオージェーティー(OJT)と対比されます。
従来、企業のなかで「人材」は、「人的資源(Human Resource)」と捉えられ、これに対する金銭的拠出はコストとして捉えられてきました。現在では、「人材」を「人的資本(Human Capital)」として捉える動きがあるなかで、今一度従業員教育のあり方にも感心が高まっています。そうした背景から、今までコストとみなされてきた人材開発費用が、社員の成長のための投資と認識され始めています。
ここでは、オフジェーティー(OFF-JT)が求められる背景を主に「能力開発基本調査(令和3年度)」を参照しながら、具体的に考えてみます。
オージェーティー(OJT)だけでなく、オフジェーティー(OFF-JT)も導入したいと思われる企業様・人事担当者様向けにそのさまざまな観点でご紹介します。ご参考になれば幸いです。
1.オフジェーティー(OFF-JT)とは
オフジェーティー(オフジェーティー、OFF-JT)とは、従業員が職場の外で行う集合研修(オンライン研修含む)を指します。主に座学型研修ともいわれ、職場での業務に必要なスキルや知識を集中的に取得するために行われる場合が多く、その実施効果は非常に高いとされ、重視されています。
なお、厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和2年度)では、「業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)のことをいい、例えば、社内で実施する教育訓練(労働者を1か所に集合させて実施する集合訓練など)や、社外で実施する教育訓練(業界団体や民間の教育訓練機関など社外の教育訓練機関が実施する教育訓練に労働者を派遣することなど) を含む。」と定義しています。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和2年度)」P.62|厚生労働省>
2.オージェーティー(OJT)・自己啓発との違いとは
よく比較されるオージェーティー(OJT)、自己啓発との違いとは何でしょうか?いくつかの観点で比較してみましょう。以下の比較図で端的に解説してみます。
形式 | 主導 | 実施形態 | 特徴・目的 |
---|---|---|---|
オフジェーティー | 会社 | 職場外 | 集中的に学ぶ知識・スキル |
オージェーティー | 会社 | 職場内 | 現場で実践的に必要な知識・スキル |
自己啓発 | 自分自身 | 職場外・会社外 | 自主的に学ぶ知識・スキル |
まず、主導という観点については、オフジェーティーとオージェーティーは会社主導での実施になります。一方で自己啓発は原則、自分が学びたい形式で自主的に学んでいきますので、自分自身が主導です。
実施形態については、オフジェーティーが職場外の集合形式(内部講師・外部講師)であるのに対して、オージェーティーは職場で仕事を進めながら計画的に学んでいきます。また、自己啓発は、原則、職場外であり、かつ会社外で学ぶこともあります。
なお、厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和2年度)では、自己啓発とは、「労働者が職業生活を継続するために行う、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動をいう(職業に関係ない趣味、娯楽、スポーツ健康増進等のためのものは含まない。)」と定義しています。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和2年度)」P.62|厚生労働省>
3.オフジェーティー(OFF-JT)のメリット・デメリットとは
では、オフジェーティー(OFF-JT)を実施するメリットとデメリットは何でしょうか?
まず、メリットは、「職場から離れて、集中的に実務に関する知識やスキルを体系的に習得できる点」でしょう。忙しい職場から離れて、知識やスキルを集中して学ぶことで、学習の効率がアップするでしょう。また、原則としてプロの講師が対応するため、「研修効果が安定する」というメリットもありそうです。OJT中心の人材育成だと、上司・指導者・先輩社員等の教え方やフィードバックの力量に左右されてしまうという点を補う効果もあります。
逆にデメリットは「現場で必要とされ、期待される実践的なスキル・知識と乖離している場合、研修時間が無意味になってしまうというリスク」が挙げられるでしょう。この問題に関しては、現場で役に立つ研修を効果的に企画・開発・運営することや、オフジェーティーの目的を受講者が認識することが大切になるでしょう。
4.オフジェーティー(OFF-JT)が役立ち、拡充される理由
オフジェーティー(OFF-JT)は、どのように役立っているのでしょうか。また、今後拡充されていくのでしょうか。いくつかの公的な調査結果から紐解いてみましょう。
例えば、「能力開発基本調査(令和3年度)」の統計を見ると、オフジェーティー(OFF-JT)を受講した正社員では「役に立った」が43.8%、「どちらかというと役に立った」が49.3%であり、肯定的意見(93.1%)が多くを占めているという事実があります。正社員以外についても「役に立った」が44.8%、「どちらかというと役に立った」が49.9%と、肯定的意見(94.7%)が多くを占めています。
オフジェーティー(OFF-JT)は実際に「役に立つ」と感じる受講者が多く、今後、オフジェーティー(OFF-JT)を拡充させる企業も多いと予想されます。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和3年度)」P.45|厚生労働省>
更に、厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和3年度)では、「正社員に対する過去3年間(平成30年度~令和2年度)のオフジェーティー(OFF-JT)に支出した費用の実績では、「増加した」(15.2%)と「減少した」(15.8%)は同水準となっており、「実績なし」は46.0%でした。今後3年間の支出見込みでは、「増加させる予定」(35.7%)が「減少させる予定」(1.1%)を34.6ポイント上回っているものの、「実施しない予定」も35.3%と多い。」としています。
上記のように、オフジェーティー(OFF-JT)への支出を増やす予定の企業は約3社に1社とも見受けられ、今後の拡充が見込まれます。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和3年度)」P.4|厚生労働省>
5.オフジェーティー(OFF-JT)活用の具体例
次に「能力開発基本調査」(令和3年度)でその活用の具体例についてみていきましょう。実施したオフジェーティー(OFF-JT)の教育訓練機関の種類については、正社員、正社員以外ともに「自社」が最も高く、正社員では76.6%、正社員以外では85.1%となっています。次いで、正社員では、「民間教育訓練機関(民間教育研修会社、民間企業主催 のセミナー等)」が40.3%、正社員以外では「親会社、グループ会社」が22.7%で続いているようです。
まだまだ自社での実施が多いことが見受けられ、自社でいかに質の高いオフジェーティー(OFF-JT)を企画・実施できるかが重要になるでしょう。
また、実施したオフジェーティー(OFF-JT)の内容は、「新規採用者など初任層を対象とする研修」が76.1%と最も高く、「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」(47.2%)、「新たに中 堅社員となった者を対象とする研修 」(45.6%)と続いています。今後実施したいオフジェーティー(OFF-JT)の内容については、「新たに管理職となった者を対象とする研修」(37.8%)、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」(35.1%)、「マネジメント研修(管理・監督能力を高める内容など)」(33.8%)の順に高くなっているようです。
現状では新入社員向け研修について、最もオフジェーティー(OFF-JT)の導入率が高い傾向があります。今後実施したい対象層としては、管理職やマネジメントクラスが注目されています。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和3年度)」P.14|厚生労働省>
令和2年度にオフジェーティー(OFF-JT)を受講した者の延べ受講時間については、労働者全体でみると、「5時間未満」が24.4%、「5時間以上10時間未満」が25.7%との結果があります。10時間未満の者が全体の2分の1を占めているようです。正社員と正社員以外を比較すると、「5時間未満」の割合については、正社員(19.0%)に対して正社員以外(48.0%)でかなり高くなっています。また、正社員以外については、10時間未満の者が7割近くを占めています。
今後については、正社員のみならず、正社員以外へのオフジェーティー(OFF-JT)の拡大が課題になりそうです。
<参考引用:「能力開発基本調査(令和3年度)」P.44|厚生労働省>
6.まとめ
厚生労働省が実施する「能力開発基本調査(令和3年度)」からは、オフジェーティー(OFF-JT)が「役立つ」とされる傾向は顕著でおり、今後導入・拡充する企業も増えていくと予想されます。今一度、自社の従業員への投資という観点でオフジェーティー(OFF-JT)を見直してみてはどうでしょうか。それにあたってはオフジェーティー(OFF-JT)という視点だけではなく、OJTや自己啓発、Eラーニングも含めた全体として、人材育成がどうあるべきかという議論も必要となるでしょう。
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この記事の編集担当
黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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