人材育成の仕組みづくりはどうすればいい?手法やポイントを解説

企業の継続的な成長のために欠かすことができないのが人材育成です。人手不足が深刻化する昨今、人材育成の重要性はますます高まっています。しかし、人材育成の大切さや必要性を理解していても、「どのような仕組みで進めていけばいいのかわからない」「人材育成を効果的に行うにはどうすればいいのか」と悩む企業は少なくありません。
この記事では、人材育成の目的や仕組みづくり、具体的な手法のほか、人材育成を成功させるためのポイントについても解説します。

2024.10.07
コラム

1.人材育成の目的

人材育成とは、企業の経営方針に沿って必要な人材を育てていくことです。単に知識を詰め込むのではなく、社員のポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを最大化することで、企業の成長・発展に貢献できる人材を育成することを指します。
人材育成は、企業の業績を向上させ、経営目標を達成することを目的としています。経営目標を達成するためには、企業を構成する社員一人ひとりが、必要なスキルを保有していなければなりません。人材育成により、一人ひとりの能力を向上させることで、組織全体の生産性向上や組織力アップを目指します。

1)人材育成と人材教育の違い

人材育成と混同されやすい言葉に「人材教育」があります。「人材育成」は、一言でいえば「人を育て成長させること」です。企業が目指すべき戦略のもと「人材像」を定義し、社員を企業に貢献できる人材に育成することを意味します。一方で「人材教育」は、一般的に「社員に知識やスキルを教える」こととされています。
人材育成が目的意識を伴った長期的な施策であるのに対して、人材教育はより短期的で単発的な施策といえるでしょう。

2)人材育成と人材開発の違い

「人材開発」も、人材育成と似た意味を持つ言葉です。「人材育成」も「人材開発」も、社員の能力を最大限引き出すための施策であることはほぼ同義です。しかし、「人材育成」は、社員一人ひとりの育成に焦点が当てられているのに対し、「人材開発」は、組織全体の人材戦略を含む傾向にあり、組織全体の力を高めていくことに重点が置かれる取り組みとされています。

2.人材育成の課題

人材育成は企業にとって重要度が高い一方、課題もつきものです。まず挙げられるのは「人材育成を行う時間がない」「社内における人材育成の優先度が低い」という課題です。人材育成に取り組みたいと考えていても、業務が多忙なために、人材育成のための時間や人員を割くのが難しいという企業は少なくありません。また、即戦力を重視するあまり、人材育成が後回しになってしまっているケースもあるでしょう。
さらに、育成する側の自覚やスキル、仕組みがないという問題もあります。管理職が人材育成の必要性を理解できておらず、体系的な育成の仕組みも構築されないまま、教育担当として任されている場合もあるかもしれません。
管理スキルと教育スキルはまったくの別物であり、優秀な管理者が必ずしも教育者として優れているとは限りません。人を育てるのには時間がかかります。自社で継続的に人材育成を行うためには、管理職へ理解を促した上で、体制づくりを行うことが重要であるといえます。

3.人材育成のための仕組みづくり

効果的な人材育成を行うためには、人を育てる仕組みを作る必要があります。人材育成の仕組みづくりの方法は下記のとおりです。

1)人材育成方針を策定

人材育成に取り組む際には、人材育成方針を策定することが重要です。人材育成方針とは、「経営目標を達成するために、どのような人材を育成したらよいか」、「企業が求める人材を育成するためには、どのような取り組みが必要か」を定義したものです。
「どのような人材が必要なのか」によって、育成内容や方法も異なります。まずは、企業が求める人材像を明確にします。企業に必要な人材像や行動指針は、自社の戦略や方向性を理解し、現在の社員の状況を把握した上で明確にすることが重要です。そのため、人事部門だけではなく、経営陣や関連部署も巻き込んで決定することをおすすめします。こうして定めた人物像をもとに、具体的な人材育成の取り組み内容を策定します。

2)人材育成のマネジメントサイクルを構築

設定した理念にもとづき、人材育成のPDCAサイクルを回していきます。具体的には、人材育成の方針に沿った人材育成プログラムを企画して(Plan)実施し(Do)、成果を評価した後に(Check)、次期課題の立案(Action)を行います。特に評価においては、人材育成と評価制度、キャリアパスを連動させる必要があるでしょう。
このようなPDCAサイクルを構築することで人材育成が仕組み化され、長期的な視点に立った取り組みが可能になります。

4.人材育成の具体的な手法

人材育成の手法は、「狭義の人材育成」と「広義の人材育成」の大きく2つに分けられます。狭義の人材育成と広義の人材育成では、それぞれ目的や具体的手法が異なります。
狭義と広義のそれぞれの具体的な手法は下記のとおりです。

1)狭義の人材育成

狭義の人材育成では、学びを通して人材を育てます。狭義の人材育成の主な目的は、社員がスキルを習得し、実践に活かせるようになることです。主な手法は下記のとおりです。

■狭義の人材育成の手法

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・OJT(On The Job Training)

OJTは、職場で実際の業務に取り組みながら行われる人材育成方法です。先輩にあたる社員が後輩に対し、業務に必要な知識やスキルを実践しながら伝えていきます。継続的に実施することで人材が効率的に成長し、人が人を育てる風土が企業に定着する効果が期待できます。

・Off-JT(Off The Job Training)

Off-JTは、通常業務から離れた場所と時間を用意し、そこで教育を行う方法です。例えば、社員を集めて行うオンラインスクールやセミナーなどが、Off-JTに該当します。大人数に対して共通のカリキュラムにもとづいた教育を行うため、効率的な育成ができ、スキルの均一化という点でも有効です。

・自己啓発

自己啓発とは、社員自らが知識や能力を向上させるために、自主的に学び、努力することを指します。具体的には、社内外での勉強会やセミナー、通信教育などです。社員の自主的な学びなので高い効果が期待できますが、成長の個人差が大きくなりやすいという注意点もあります。

・次世代リーダー育成

将来経営を担う幹部として早期に候補者を選出し、中長期的かつ段階的に支援する人材育成方法です。リーダー研修などを通して、思考力や問題解決力、指導力といった具体的なリーダーシップスキルを学びます。

2)広義の人材育成

広義の人材育成では、社員のモチベーションや向上心を高めることで人材を育てます。狭義の人材育成に加えて、広義の人材育成に取り組むことで、効率的な仕組みづくりが可能になるでしょう。広義の人材育成には、主に下記のような手法があります。

・社内FA制度

社内FA制度は、社員が希望する部署へ自身の売り込みを行い、能力や技術に応じて異動・転籍できる制度です。社内FA制度を導入することで、社員の成長意欲を高めると同時に、組織の活性化も期待できます。

・ジョブローテーション

ジョブローテーションとは、定期的に職場を異動したり、職務を変更したりする制度のことです。多様な業務経験を積むことで、社員のスキルアップと成長意欲を促す狙いがあります。

ジョブローテーションについては、下記の記事をご覧ください。
ジョブローテーションとは?メリットや効果を高めるポイントを解説

・メンター制度

メンター制度とは、年代の近い年上の先輩社員が、新入社員や若手社員をサポートする制度です。一般的には、通常業務の上司とは別部署の先輩社員がメンターを務めます。新入社員や若手社員は、相談しやすい先輩からメンタル面のサポートを受けながら、必要なスキルを身につけることができます。

メンター制度については、下記の記事をご覧ください。
メンター制度とは?メリット・デメリット、行う際のポイントを解説

5.人材育成を成功させるためのポイント

人材育成を成功させるには、意識したいいくつかのポイントがあります。取り組みの効果をしっかりと発揮させるために、下記のポイントを確認しておきましょう。

1)社員が自律的に学びのサイクルを回せるようにする

これまで解説してきたように、効果的な人材育成を目指すには、企業として人を育てる仕組みを作ることが大切です。しかし、いくら人材育成の仕組みを整えても、学ぶ側の社員が主体的に取り組まなくては、十分な効果を得ることはできません。
社員が意欲を持って主体的に学ぶためには、時間的、精神的な余裕が必要です。一人ひとりの適切な業務量を見直す、社員のスキルアップを支援する制度を設けるなど、自律的に成長していけるような環境整備が求められるでしょう。業務に関連する資格を取得したり、社内外の研修に参加したりした社員に対して手当を支給するなど、経済的なサポート制度を用意するのもひとつの方法です。

キャリア自律については、下記の記事をご覧ください。
キャリア自律とは?定義や必要性、企業が支援するメリットを解説

2)人材育成を実施後に検証を行い、ブラッシュアップする

人材育成の施策は、一朝一夕に成果が出るものではありません。経営目標の達成という目的に向けて、長期的な視点で継続して取り組んでいく必要があります。そのため、研修などの施策を行った後には、アンケートやテストを行い、効果測定とブラッシュアップを実施します。
検証を行う際は、「社員の成長」という軸だけではなく、「企業の利益にいかに貢献したか」という観点でも効果測定をするとよいでしょう。効果測定を改善へつなげ、PDCAサイクルを回し続けることによって、企業の人材育成力を高めることができます。

6.効果的な人材育成を実現するには、プロの力も活用しよう

人材育成は、企業の将来の成長を左右する重要な課題です。業績を向上させ、経営目標を達成するためには、効果的な人材育成が欠かせません。人材育成を行うには単発的な研修を行えばいいというわけではなく、しっかりと方針を定めた上で全社的な仕組みを作る必要があります。人材育成に取り組む際には、まず、自社の体制が整っているかを見直すところから始めてみましょう。自社だけで人材育成の仕組みづくりが難しい場合は、外部の専門家の力を借りるのもおすすめです。

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キャリア自律研修については、下記のページをご覧ください。
キャリア開発 仕組・体制構築支援サービス キャリア自律研修

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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