リーダー育成がうまくいかない原因とは?育成方法とポイントを解説
企業が成長を続けていくために欠かせないのが、組織を力強く引っ張っていくリーダーの育成です。しかし、リーダー育成の重要性を理解しつつも、課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。
リーダー育成を成功させるには、まず課題を明確にし、その解決に向けた取り組みを進めることが重要です。
この記事では、リーダー育成がうまくいかない原因と、成功のためのポイントについて、具体的な方法を交えて解説していきます。
1.今求められるリーダーとは
リーダーとは、定めた目的を達成するために、複数人を束ね、導く人材のことです。企業が成長を続け、価値を生み出していくためには、集団の力を引き出す優秀なリーダーの存在が欠かせません。
ただし、求められるリーダーは、ビジネス環境や社会背景によって変わります。リーダーが明確な指示を出すトップダウン型で、成果を上げてきた企業も多くあります。しかし、このような組織構造では、指示を待つ社員が増えることへの懸念は少なくありません。
不確実性が高く変化の激しい現代においては、画一的な方法で成果を上げることは困難になり、これまで以上に社員の主体性が重要視されます。今、求められるリーダーは、柔軟性を持ち、チーム全体の士気を高めながらメンバーを導くことができる人物といえるでしょう。
■リーダー像の変化
1)リーダー育成とリーダーシップの育成
リーダー育成を考える際に注意したい点は、「リーダー」と「リーダーシップ」を混同しないことです。リーダーとは、組織を統率し、機能させる役割を担う人材を指します。一方で、リーダーシップとは、「目標を達成するための統率力」を意味します。
一般的に、リーダー育成というと、将来の経営人材となる次世代リーダーの育成を指すことが多いでしょう。しかし、変化が激しいビジネス環境の下で企業が成長し続けるためには、組織の社員一人ひとりがリーダーシップを発揮できる環境を整えることも重要です。役割としてのリーダーの育成と、全社員に向けた個々のリーダーシップの育成は、それぞれ異なる取り組みとなります。
リーダーシップスタイルの種類については、下記の記事をご覧ください。
リーダーシップスタイルの種類とは?それぞれのタイプや理論を解説
2)リーダーとマネージャーの違い
リーダーが指導者・統率者であるのに対して、マネージャーは管理者です。マネージャーの役割は、ルールに則って組織を管理・運用し、組織の目標達成のために部下を支援することです。リーダーは進むべきビジョンを示し、部下を先導しますが、マネージャーは部下に業務を割り振り、後方から指揮を執るという違いがあります。
しかし、不確実性が増す今の時代では、ただ業務を割り振って管理するだけでは、組織の目標達成が難しいケースも少なくありません。そのため、現在はマネージャーもリーダーシップを発揮することが求められるようになっています。
2.リーダー育成の課題
リーダーの育成は、多くの企業にとっての重要事項です。しかし、リーダー育成の必要性を認識しながらも、なかなかうまくいかないと悩む企業は少なくありません。リーダーが育成しづらい背景には、主に次のような課題があります。
1)リーダー育成の難易度が高い
リーダー育成でまず大きな課題となるのが、リーダー育成そのものの難易度の高さです。リーダーを育てるには、画一的な教育ではなく、一人ひとりの個性やスキル、経験を踏まえ、それぞれの強みを引き出すことが求められます。さらに、リーダー育成は、評価と改善を繰り返しながら時間をかけて取り組む必要があるため、育成の成果はすぐに表れない傾向にあります。リーダー育成自体の難しさに加えて、短期間では定量的な成果が見えにくいことも、リーダー育成がうまくいかないと感じられる要因です。
2)社員の育成時間が取りづらい
リーダー育成の課題として、「育成のための時間を確保できない」という点も挙げられます。リーダー育成は、短期間で集中的に行えるものではなく、教育のために一定の時間を確保する必要があります。次世代を担うリーダー候補者は、現場にとっても重要な戦力であることが多いでしょう。リーダー育成のために時間を割けば、通常の業務に影響が出たり、現場のメンバーの負担が増えたりする可能性があります。場合によっては、現場の業務が優先され、育成の優先度が下がってしまい、リーダー育成が進まないといったケースも少なくありません。
3)リーダー志向の若手社員が少ない
リーダー候補となる若手社員の価値観の変化も、リーダー育成における課題のひとつです。働き方の多様化が進むなかで、キャリアに対する考え方も大きく変わり、リーダー志向を持つ社員は減少傾向にあります。かつては主流だった「ひとつの企業で長く働き続ける」という価値観も変化し、「自分が望む働き方を選びたい」「自分の能力やスキルをより発揮できる環境を求めたい」と考える人が増えています。
そのため、リーダー候補者がリーダーの役割に興味を示さなかったり、リーダーの育成をした社員が転職や起業で企業を離れてしまったりすることも少なくありません。
20代社員のキャリア課題については、以下の記事をご覧ください。
20代社員が抱えやすいキャリア課題と解決のポイント
3.リーダー育成のための企業の取り組み
リーダー育成を効果的に進めるには、前述した課題を踏まえた上で、企業の環境を整えていく必要があります。リーダー育成のための企業の取り組みを以下に挙げます。
1)リーダー像の明確化
リーダーを育成するために不可欠なのが、リーダー像を明確にすることです。リーダー像が曖昧では、育成計画の方向性を確立することができません。まずは、企業のビジョンや経営目標をもとに、自社で求めるリーダー像を明確にすることが必要でしょう。加えて、リーダーにどのような行動を期待するのかも、共通認識を持てるように具体的に定めることをおすすめします。
2)人事評価制度の見直し
リーダー育成には、人事評価制度の見直しも併せて行うと良いでしょう。リーダーとして期待する行動や目標を明確に定め、それを人事評価に反映させる仕組みを整えることをおすすめします。客観的で公平な評価基準を設けることで、リーダー候補者のモチベーション向上にもつながりやすくなります。
3)リーダーになるメリットを周知
リーダー候補者に「リーダーになるメリットがわからない」「企業の一方的な押し付けではないか」などと思われてしまっては、リーダー育成はうまくいきません。リーダー育成に着手する前に、その意義や目的、メリットを社内に周知し、社員の理解を得ることが大切です。
4.リーダー育成の方法
リーダー育成は、どのような方法で進めれば良いのでしょうか。ここからは、リーダー育成の方法を具体的に紹介します。
1)リーダー育成のための研修を取り入れる
まずは、リーダー候補者を対象とした研修などの学びの場を提供します。研修を通して、リーダーの役割を理解し、チームメンバーの強みを引き出す力や、変化を予測し仮説を立て検証する力、適切に判断し行動する力などを養います。
研修を実施する際には、自社の事業や組織の状況に合わせて、内容を常にアップデートする必要があります。社内に研修のノウハウがない場合は、外部に依頼するのもひとつの方法です。
2)実践とフィードバックの機会を設ける
リーダー育成のための研修を行っても、それを実践する場や、フィードバックを得て内省する機会がなければ、一時的な学習で終わってしまいかねません。研修で得た内容を通常業務のなかで実践し、改善できるような環境づくりが重要といえます。1on1ミーティングを設けて、実践の結果に対するフィードバックを行うこともひとつの方法です。
5.リーダー育成のポイント
リーダー育成を成功させるには、企業として意識したいいくつかのポイントがあります。リーダーを育成する上で大切なポイントは、以下のとおりです。
1)企業全体で取り組む
リーダー育成は、企業全体で取り組むことが重要です。リーダー像の設定や教育プログラムの実施、現場業務との調整は、人事部門だけで担えるものではありません。リーダー育成に伴う負担を軽減するためにも、企業全体でサポートし合える体制づくりが必要です。
さらに、時代によって求められるリーダー像は変化します。経営陣との共通認識を持ちながら、随時、人事評価制度の見直しや教育体制の整備を行うことが求められます。
2)中長期的計画を立てる
リーダー育成のポイントのひとつは、中長期的な育成計画を立てることです。リーダー育成は短期間で成果が見えるものではありません。学習と実践、改善を繰り返しながら、試行錯誤を続ける必要があります。若手社員の場合は、小さなタスクから成功体験を積み重ねられるようにサポートがあると良いでしょう。
3)キャリア自律を支援する
リーダー育成と並行して、キャリア自律を支援することも効果的なリーダー育成のポイントのひとつです。リーダーシップを発揮できる人材は、時代が変化しても、自分で考え、周囲を巻き込みながらプロジェクトを推進できるため、求められる人材であり続ける可能性が高いといえます。
キャリア自律を支援することで、社員が自身の成長イメージや目指すキャリアとリーダーシップ発揮の関連を意味づけできるようになれば、リーダー育成が加速することも期待できるでしょう。
キャリア自律については、下記の記事をご覧ください。
キャリア自律とは?企業が支援する際の注意点やポイントを解説
6.リーダー育成には中長期的な視点が必要
不確実性が高く変化の激しい現代において、リーダーの育成は企業の急務といえます。また、時代の変化に伴い、従来とは異なるリーダー像が求められるようになっています。
リーダー育成を成功させるためには、リーダー像を明確にし、研修などのインプットだけではなく、並行して実践と改善を繰り返すことが重要です。全社的な取り組みとして進め、自社の将来を担う人材を育成していきましょう。
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この記事の編集担当
黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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