多様な部下のマネジメントの考え方

一人ひとりのキャリア自律が重要となっていく中、上司である管理職は多様な人材をマネジメントする必要性が生まれてきています。そこで、業種業界、そして職種の垣根を越えて、様々な方々の研修を担当して頂いている、宮本トレーナーにご自身のキャリア感とマネジメントについてうかがってみました。

2016.08.01
インタビュー・対談

略歴を伺う前に、宮本トレーナーには管理職研修だけではなく、現業職の方の研修も担当していただいています。幅広い経歴の方たちの研修を担当していただいているため、マルチな印象もあります。

宮本:いろんなことに接するときに、私は常にゼロベースなんですよ。あらゆる基本が。人との関わり、モノとの関わりもゼロベースなので、どんな人でも場所でも、まずは受け入れるところから始めます。自分で自分の囲いはつくらない。キャパシティは無限大です(笑)。

そんなゼロベースに至った経緯を、まずはお伺いしたいと思います。

宮本:labo_160801_01.jpg高校時代に人間の心理、人間そのものに興味を持ったので、大学で臨床心理学を専攻しました。大学の授業だけではなく、診療に立ち会ったり、アセスメントをやったりしていました。そんななかで、統合失調症の患者との面談がうまくいきません。彼らがほとんど私を相手にしてくれなかったんです。勉強してきているのに、その知識を活用しているはずなのに、受け入れてもらえない。いろいろ試行錯誤の上、先輩からのアドバイスもあって、「自分を消す」ということを試してみました。言い方を変えれば、自分のことを棚上げする感じでしょうか。その状態で接すると彼らに受け入れてもらえたんです。つまり、自分に色がついていると、それに合う人はいいけれど、合わない人とは合わないままになってしまいます。そこで、自分を消す、棚上げしてみる。
この経験が、今の自分のベースになっていると思います。
変なこだわりを持たないこと、そうすれば人との付き合いも自由になるし、やったことがないからできないではなく、まずやってみようという発想になる。こうなるとラクですし、面白いんです。自分に対しても制限がないので、常に新しい自分と出会うことにもつながります。

そういう経験を経て、リクルートという企業で社会人生活が始まったんですね。

宮本:最初は大学院に進み心理学の研究を続けるつもりでした。心理学の先輩がリクルートにいて、その人の誘いから、リクルートという会社に興味を持つようになりました。当時のリクルートは、江副社長の方針の元、面白い人間が集まっていました。そこで、心理学の専門家になるより、「もっといろいろな人間を見た方が面白いかもしれない」と思い始めたわけです。とは言っても、あの独特の社風についていけるかなとも思いました。でも、それも棚上げです。自分が見たことのない世界があるなら、入らなければもったいない。今とは正反対の世界に身を置いたらどうなるんだろうとワクワクしました。
自分を内省したときに、生きていく上で私自身が大切にしているキーワードは、「自由・変化・発見」なんですね。リクルートを選んだのもそれがベースにあったんだなと、後になって納得しました。

管理職もされたそうですが、どんなキャリアを経験されたのでしょうか。

宮本:入社して配属されたのは部員がたった5人の新規事業部でした。転職情報誌の創刊プロジェクトが動き始めたばかりで、好きにやってよい、ただし業績だけは上げなさいと言われました。逆に言えば、業績だけ上げていれば好きにできる環境でした。新入社員もベテランも問わない。そこで、業績を上げ続け、20代後半で管理職になった。管理職になればさらに好きにできると嬉々として働いていました。
とはいえ、事業は急拡大する一方、利益がそんなにでていないため、いい人材をなかなか回してもらえない状況でした。仕事は山のようにある。そこで、ほかで芽が出なかった社員、新人、そしてアルバイトと、いろいろな人を寄せ集めて組織するしかありませんでした。そういう人たちをどうやったら活き活きさせられるか。
その時に実践したのが、「方向づけ」「自分の力が発揮できる環境づくり」「その気になるような言葉掛け」のマネジメント。それを丁寧にやっていくうちにメンバーが活き活き仕事をするようになってきて、どんどん力を発揮してくれる。人はマネジメントで大きく変わることを実感しました。
組織も小規模から始まって次第に大きくなっていく中で、私が身につけた力は、「ゼロベース発想」「やるならとことん」「まず始めよ」。そして組織を動かすマネジメントで大切なことは「方向づけ」「環境づくり」「動機付け」。一人ひとりを活き活き働かせるマネジメントをすれば、業績は自然と上がるのではないでしょうか。

企業勤めを卒業して、今はトレーナーとして活躍されている。そのきっかけは何だったのでしょうか。

宮本:外山滋比古さんの書かれた「人生二毛作のすすめ」という本がきっかけですね。サラリーマンをやっていると60歳で定年になる。そこからどんな生き方をするか、全く違うことをゼロから始めると人生2倍楽しめると書いてあったんです。二期作ではなく二毛作か、よし、会社員のあとはこれまでとは全く違うことをやろうと決めました。51歳の時です。やるならとことん、ゼロベースで。「組織」で働くのではなく「ひとり」で。一人でやるなら何がいいかを考えていると、「FPは未来学」という言葉に出会い、金融のきの字も知らなかったので、あえてFPを選ぶことにしました。会社を辞め、すぐに専門学校に通い、まずAFP資格を取り、1年後にCFP資格を取りました。
それで、その年の年賀状に「CFPを取りました」と一言添えて出したところ、コンサルタントの松田さんから連絡があって、「研修に興味ないかな」と誘われたわけです。キャリアカウンセラーの資格があったほうがいいということで、そちらも取ることにしました。
実際、トレーナーをやってみたところ、初回の研修で人が変わる瞬間を目の当たりにしました。人が変わるには気づきが必要です。自分が話し、人からのアドバイスもあって、何かが腹落ちする。自己啓発の研修は、本当の自分に出会える場だと思います。
なりたい自分を発見するのは、本人にとっても社会にとっても、組織にとっても幸せなことです。トレーナーの最大のミッションは本来の自分を取り戻す「場づくり」にあると思っています。

この先、どんな生き方をしていきたいですか。

宮本:labo_160801_02.jpg「自分のココロに素直な生き方をする」ですね。
今の生き方、気に入っています。毎日いろいろな人と出会える。変化があるし、発見がある。スケジュールも自分主導で決めることができます。
先週も4日連続、今週も4日連続研修ですが、楽しいです。緊張もするけれど、苦になりません。常に、今日はどんな出会いがあるかを考えるとワクワクします。
その代わりと言うか、研修の前はお酒を抜きます。実はお酒が大好きなんですが、自分なりのプロ意識の表し方ですね。人生をじっくり考える場面では、フル稼働、とことんの状態でなくてはと思っています。一人ひとりの人生にきちんと向き合いたいですから、研修の場ではちょっとした一言も逃さないように、神経を研ぎ澄ましますので、そのためにもという感じですね。研修の機会が増えるとお酒の量が減り、おかげで体調もバッチリです(笑)。
研修のフィニッシュは、「人は、なりたい自分になる」で締めます。では私のなりたい自分、キャリアビジョンは何かというと、「ライフカウンセラーとして、幸せ人生サポーターになる」ことなんです。これからも人が変化する場を作り続けていきたいですね。

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トレーナー紹介

宮本 正則
研修というひとつの機会が、その人の転機(トランジション)となり、ひと皮むけた自分になるきっかけとなる。そんな研修のサポーターでありたいと思っています。
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