「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2017.06.26 個人の活躍

与えられた仕事に前向きに取り組むことで、新しい可能性が開けた

与えられた仕事に前向きに取り組むことで、新しい可能性が開けた

日本航空株式会社様の55歳以上の社員を対象としたライフプランセミナーの社内講師第一号として活躍する横山博史さん。企業から新しく託された役割に対峙しながら、自分自身としてのありたい姿や果たしたい役割を見出されてきたそうです。

55歳で社内研修の講師に。突然の配属に最初は戸惑った

---現在のご担当業務について教えていただけますか?

当社では55歳以上のJALグループ全社員を対象に定年後のセカンドライフについて考える「ライフプランセミナー」を2013年より内製で実施しています。このセミナーの講師として、グループ会社含め年間200〜300人の社員の前でお話しするのが私の仕事。2017年度は年間28回実施予定で、全国を飛び回っています。

---横山さんは御社で長く社員教育に携わってこられたのですか?

それが違うんです。「ライフプランセミナー」の講師を任ぜられたのは2013年1月。それまでは空港、営業、総務を担当してきたのですが、社内研修の企画・実施をする部門への異動発令が出ると同時に、「ライフプランセミナーの社内講師をやっていただけませんか?」と上長から話がありました。JALは2010年の経営破綻以来、研修の内製化を進めており、適性のありそうな人財を社内講師として育てたいという意向があったようです

しかし、私にとっては青天の霹靂。多数の社員の前で長時間話すことに慣れていませんでしたし、趣味など個人的に自信のあるテーマについて話すならともかく、60代以降のライフプランという私自身もこれから勉強しなければいけない未知の領域に関することをお話しするわけでしょう? しかも、当時の私は55歳で、受講者の大半は自分よりも先輩の方々ばかり。「若輩者の自分が先輩に人生論を説明する役割はとても務まらないのでは・・・」と上長に悩みを打ち明けました。すると、上長はこともなげに「大丈夫。あと数年も経てば、受講者はみんな横山さんの後輩ばかりになります。時間が解決しますよ」と。ずいぶん大らかなことをおっしゃると思いましたが、現在は講師になって4年が経ち、上長の言葉通りになりました(笑)。


研修講師として、社外で通用するレベルを目指そうと思った

---研修講師のお仕事を実際にやってみて、どうお感じになりましたか?

「ライフプランセミナー」の最大の目的は、定年後を見据え、受講者に自分のライフプランを主体的に考える習慣をつけてもらうことです。研修の内容を理解するにつれ、「これは他人事ではなく、自分自身にとって重要なテーマだ」と感じるようになりました。私自身も「これから先、いつまで働き続けられるだろうか」「自分が活躍できる場所はあるのだろうか」という漠然とした不安を抱えながら、日々の業務に追われ、じっくりと自分の人生について考える機会を持たずにいたことに気づいたからです。

そこで、関連の雑誌や書籍などを読んだり、社外のセミナーに自ら参加してライフプランの考え方を勉強したりしていくと、自分がこれからやるべきことが少しずつ見えてきて、以前よりも気持ちが前向きになっていきました。そうすると、「これは同世代の人たちにぜひ伝えたい内容。同じ学ぶからには、社外でも講師として通用する高いレベルを目指そう」とさらに意欲が湧いてきました。その後、ライフプランセミナーの研修講師養成講座を受講し、外部で活躍できる主任講師の資格を2017年1月に取得しました


自分が誰かの役に立てる。その実感が大きなモチベーションに

---個人的に学ぶことで、受講者の方々の反応は変化していきましたか?

ありがたいことに、最初からアンケートなどの評価は悪くはなかったんです。ただ、ライフプランについて個人的にも社外研修で学び、私自身が感じたこと、考えたこと、体験したことを飾らぬ言葉で素直に話すようになると、受講者の生の反応がさらに良くなっていきました。自分にとって役立つことを学んでそれを会社にフィードバックし、それでお給料をいただけるなんて一石二鳥だと(笑)。

何より、「自分が誰かの役に立っている」と直接的に感じられることがすごくうれしかったですね。受講者はそれなりのキャリアと人生経験を持つ社員であり、評価も遠慮なくシビアです。そのような環境で、全員から高評価を得るのは難しいにしても、多くの方たちに「これまでにない気付きを得られた」「本音の話を聞けてよかった」と言ってもらえた。それは大きなモチベーションになりました。


50代はまだまだ「修業中の身」。「人生終わった」なんて言っていられない

---御社は60歳定年制で、65歳までの再雇用制度(1年契約)がありますね(2017年5月現在)。定年後のご自身のキャリアや生活について、何かビジョンはお持ちになっていますか?

55歳で現在の仕事を担当した時、ビジョンはなかったです。定年後のことを考えるのは何だか寂しいという思いもありましたしね。でも、今は逆で、この先のことを考えるのが楽しいんです。シニア層のライフプランというテーマを継続して追求していきたい。会社で働けるのは最長で65歳までですが、ご縁があれば、65歳以降は社外講師として生涯現役としてやっていきたいと思っています。

先日、主任講師資格を取得した協会の総会に参加する機会があったのですが、50名ほどの講師が集まり、メインの年齢層は60代、70代。最高齢は90代。80歳で年間250日研修講師で登壇しているというトップレベルの方もいらっしゃいました。シニア層のライフプランセミナーの講師は年功を積んだ人ほど経験を踏まえた説得力のある話ができるので、企業などから最も需要があるのは60代から70代の講師だそうです。50代はまだまだ「修業の身」。「人生終わった」なんて言っていられないと思いました。

---横山さんは御社の「ライフプランセミナー」の社内講師第一号。新しい職域を開拓されてきたという側面もありますね。横山さんの姿を見て、社内講師を志望される後輩社員もいらっしゃるのではないでしょうか?

rc_c_170508_01.jpgそうであれば、うれしいですね。これまでお話しましたように、私自身は最初からこのテーマに深い関心があったわけではなく、また社内講師になりたいと思っていたわけでもありません。最初は「会社から与えられた仕事だから、応えなければ」とやっていただけなんです。ただ、せっかくセミナーをやるなら、楽しく興味を持ってもらえる内容を目指し、自分も情熱を持って取り組みたかった。それで、キャッチアップのための勉強をするうちに個人的なテーマを見つけることができ、会社の仕事にも手ごたえが出てきたという感じです。この仕事を与えられたからこそ新しい可能性が広がったと会社には感謝をしています。


プロフィール

横山 博史さん1957年生まれ。光学機器メーカーを経て1992年、日本航空入社。空港、営業、総務などを経て2013年より人財本部 意識改革・人づくり推進部20176月より人事部 人財育成グループ)。教育研修グループのマネジャーとして、55歳以上のJALグループ全社員を対象としたライフプランセミナーの講師を務めている

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