「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2019.05.29 個人の活躍

定年→再雇用への転機を経ても活躍できるポイントとは
第2回/全2回:定年後のキャリアを充実させるために

定年→再雇用への転機を経ても活躍できるポイントとは第2回/全2回:定年後のキャリアを充実させるために

「役割創造プロジェクト」で2017年に取材をさせていただいた吉田純一郎さん。大手メーカーの知財法務部門に所属し、組織開発、人材育成の仕事で力を発揮する一方、ファシリテーショングラフィックなどの会議ノウハウやコーチングスキルを活かして勉強会を開くなど社外でも積極的に活動。2018年10月に60歳で定年を迎えた後も再雇用され、定年前と同じ職場で活躍し続けています。
そんな吉田さんに、定年から再雇用への転機を経ても活躍できるポイントをお伺いした全2回のコンテンツ。第2回では定年後のキャリアを充実させるために大切なことなど、ご経験を通してのリアルなお話をお聞きしました。

再雇用後、プロボノ(*)で地元へも貢献

−−−再雇用後、社外での活動に何か変化はありましたか?

従来から続けている絵画制作やヨガに加えて、地域活動のボリュームが少し増えてきました。私は川崎市民なのですが、毎日ほとんどの時間を勤務先のある都内で過ごしてきたので、実態は川崎都民ですよね。以前は市内に区がいくつあるかとか市長の名前も知りませんでした。いずれ完全にリタイアすれば地元で暮らす時間も増えていくのに、その地元のことをほとんど知らないというのはさみしいなと思っていました。そこで、再雇用後に時間の余裕ができたら、何か地元に密着したことをやってみたいと考えていました。そんな折、川崎市が主催する「川崎プロボノ部」というプロボノ活動がスタートするということで、再雇用前からですが参加するようになりました。

プロボノ(*)
社会経験のある専門家で自分の経験やスキルを生かして、社会貢献する活動。
語源は、ラテン語の「公共善のために」を意味する pro bono publico の略。

−−−どんな活動をされているのですか?

活動の様子数名でチームを組んで、川崎市内で高齢者支援や子育てママ支援などの社会課題に取り組んでいる団体さん達を後方でお手伝いする活動です。
お手伝いの内容は、例えば集客のためのマーケティングプランの立案や団体の魅力的なHPの作成などいろいろあるのですが、私の場合は、前述の3つのスキルを活かして団体さんの課題の見える化や活動スケジュールの作成などをお手伝いしています。議論をリアルタイムに板書したりノートに整理するスキルは役に立ちますね。
今までに川崎市内でも、自分の地元とは別の地域で活動している合計三つの団体さんのお手伝いをしました。団体さんに喜んでもらえると嬉しいです。加えて、その過程で、時々メディアの取材を受けたり、プロボノを特集する番組に出演したりもします。支援している団体さんは、私より一世代上の方々が運営している場合が多く、一方、プロボノのチームには私の子供世代もメンバーとして参加していて、彼ら彼女らと対等な立場で仕事をするのは、いろいろ刺激も受けますよ。何より、会社の仕事では絶対にかかわることのないような職種、世代の知り合いが増えていくのはうれしいし、財産です。
この活動の気持ちの上での延長線かな、と思っていますが、2020年東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集にもエントリーしました。先日、このボランティアの説明会に参加したのですが、私と同世代の方も多く、ホッとしました。

−−−素敵ですね。吉田さんは40代から社外での活動をされていますが、社外活動をしてみたいと思いつつ、なかなか一歩を踏み出せないという人も多いように思います。

吉田 純一郎さんそういう方たちの気持ちはわかります。ただ、「人生100年」と言われる時代になり、60歳以降もなんらかの形で社会とかかわっていくこと、特に仕事を続けることは生活をしていく上でも必然です。なかなかご隠居さんにはなれません。そんなとき、今までの仕事の能力やそれに対するニーズが、定年後もずっと旬を維持することは少なくて、新たな能力を身につけたり、再発見しておかないとつまらないですよね。
だったら、なるべく早い時期から、今の仕事軸と並行して自分のやりたいこと、好きなことは何か、を明確にして、それに立脚した軸を持ち、それを仕事の新たな能力に育てていく。そういうことがこれからのキャリアにおいても、ライフにおいてもとても大事な気がします。
とはいえ、どうしたら軸が持てるかを考えるのは、ましてやリカレント教育とかパラレルキャリアと言われると、意識高い系っぽいし、何か気が重いですよね。そんな時こそ、社外活動は役立ちます。新しいことを始めるきっかけとなったり、職場では出会えない人に会うといった「他流試合、社会人インターン」がふんだんにできますから。自分の眠っていた本当の好きな事や強味があぶり出されやすくなると思いますよ。

シフトチェンジをするごとに景色の見え方が変わる。それが人生の妙味

−−−今後のキャリアについて、お考えになっていることがあれば、教えていただけますか?

少なくても70歳くらいまでは仕事というか、何らかの形で世の中とかかわっていきたいですね。老いていく中で、孤独というのが一番怖い気がしていて。世の中とつながりを持つということは本当に大事だし、楽しいことだと思います。

−−−最後に、後輩世代にメッセージをお願いします。

自分自身が経験してみてよくやくわかったのは、何だかんだ言って「定年」というのは大きな出来事だということです。本人に意識はなくとも、身体は正直なもの。気づけば年齢相応に体力も落ち、40代、50代と同じようにはエネルギーが出せなかったりもします。ただ、最近思うのは、人生、その時々のパワー配分というか、常に同じパワーで走り抜けるのではなく、うまくシフトチェンジしていくことが大事だなと。エネルギーのほとんどを仕事に傾ける時期もあれば、少しずつ仕事から地域活動に重心を移したり、趣味に打ち込んだりと切り替えをしていく。そのたびに景色の見え方が変わるのが人生の妙味かなと思います。

プロフィール

吉田 純一郎さん 1958年生まれ。大学では機械工学を専攻。82年卒業後、大手メーカーに入社。生産技術部門を経て、知的財産管理、経営企画、人材育成、組織開発業務などに携わる。一方で、2000年ごろから異業種交流会や人事系のセミナー、コーチングスクールなど社外での学びを活発化。「会議のファシリテーションがうまい」と言われた事をきっかけに、自身の会議運営のノウハウを「会議をよりクリエイティブに、効率的に」をコンセプトにパッケージ化し公開講座などで広く提供している。「ホワイトボードで創造会議」主宰、PHP研究所認定ビジネスコーチ、C.N.S話し方研究所認定話し方インストラクター、Herrmann Interbational Asia認定ハーマンモデルファシリテーター。

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