「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2020.03.27 個人の活躍

エンジニアから大学への出向、そこで得たものとは?

エンジニアから大学への出向、そこで得たものとは?

株式会社ブリヂストンに入社後、樹脂製品開発、品質経営などの業務を長く経験された増谷真紀さんは、その後ダイバーシティ推進室の主任部員を兼任。2018年よりお茶の水女子大学へ客員准教授として出向しています。エンジニアとは全く違った環境の大学でのお仕事について、当初の気持ちややりがい、そして、ダイバーシティ推進室での活動とこれからのキャリアについてうかがいました。

企業から大学への出向

―お茶の水女子大学に出向された経緯を教えていただけますか?

増谷(敬称略):お茶の水女子大学と株式会社ブリヂストンは女性活躍推進とよりよい未来を作るために2017年、包括的協定を結びました。最初はプロジェクトリーダーとして動いていく中で、どう進めようと色々と悩んでいたんですね。そして、交流していくうちに、お茶の水女子大学の学生さんはとても素晴らしいということがよく分かってきまして、未来を創る世代の学生と一緒に未来について話ができるような内容がよいという結論に至り、授業を実施することになりました。 現在は、週に1、2回本社に行く以外は大学で働いています。

―増谷様はもともとは開発をされていたんですよね。

そうなんです。入社当時は開発段階の製品を工場で繰り返し試作するようなこともたくさんやってきました。リーダー育成や大学生に何かを伝えるということは、ほとんど経験がなかったので、勉強しながら進めています。偶然にも、娘が大学1年生で、まさに自分の子どもに伝えたいことと今回のプロジェクトの向かっているところが一致していたので、楽しかったですね。

―どういう風に勉強され、創り上げていったのでしょうか。

私は40代で管理職になったのですが、今までの開発職とは違うことが求められる中で、管理職に必要だと思われることを勉強してきました。その中で、未来は今まで自分たちが過ごしてきた常識やルールが通用しないのだと分かり、未来のリーダーは、これまでのリーダーとは違うものになる必要があると強く思っています。その内容をプログラムに盛り込んでいます。


未来は「願望」と「実現する力」で創られる

―大学生に向けて具体的にはどんなメッセージを送られていますか?

学生に最初に伝えているのが、「未来は願望と実現する力で創られる」ということ。授業では「あなたの願望って何?」という問いかけをしています。1年間の授業の中で、前期は、自分の望んでいることや願っていることは何かを探求してもらい、後期はそれを実現するためにどうしたら良いのか、ということを実践する設計にしています。今は予測不可能なVUCAの時代と言われていて、大企業に勤めているから安心、という時代ではないと思っています。だからこそ、自分の軸や本当にやりたいことが見えていることが重要だと考えているので、それを軸としたテーマ学習を行っています。これまでテーマや知識を与えられる学習スタイルだった学生にとって自分で自分の取組みたいテーマを見つけることはとても難しい課題だったと思いますが、テーマが定まると自然に主体的にテーマ学習を進められるようになります。

―非常に大きくかつ大切なテーマですよね。学生に変化も表れているのだと思いました。そこで、今後の増谷さんのキャリアプランも気になるのですが、今後について考えられていることを教えて下さい。

増谷 真紀さん現在所属している部署が、事業開発企画本部というところで、新規事業立ち上げやイノベーションを生み出すことが目的の部署なんですね。「どうやったらイノベーションが生まれるのか?」ということを、授業でも考えていますし、関心が高いので、ブリヂストンに戻ってからも、自分の中のテーマにしたいと思っています。具体的には、今年、お茶の水女子大学の授業の中で取り入れた、SDGsを学ぶカードゲームを、会社でも取り入れられないかと考えたりもしています。なぜSDGsが必要なのか、2030年に目標を実現するために一人ひとりが何をしたらよいのかを考えられる設計で、SDGsの世界観を通じて、イノベーションを起こすようなことができたらいいなと思っています。 もう1つは、今回、お茶の水女子大学での講義を経験し、教育というものへの興味が増し、今後は社外での活動の幅を広げていきたいとも思っています。


会社に根気強くアピールしチャンスをものに

―社内研修講師なども引き受けられていますが、もともと教育には興味があったのでしょうか?

そうですね。伝えたいという欲求は強いタイプだと思います。20年以上前ですが、実験を何度も繰り返してはうまくいかないという時に、ある統計学(品質工学)に出会い、すごく効率的にできることに気づいたんですね。その時には、全社にもぜひ取り入れて欲しいと思って、毎年自己申告のタイミングで、希望を書き続けました。6~7年かかりましたが、結果的に品質工学を社内で浸透するような部署に異動できたんです。その時には、社内の技術者の方に少しでも知ってもらいたいという想いでしたね。

―ダイバーシティ推進室も兼務されていましたが、どのような活動をされていたのでしょうか?

ダイバーシティ推進室の立ち上げ期からなので、10年ほど関わっていました。最初は、制度をどうするか?風土を変えるにはどうしたらいいか?育休に入った女性に対して何を行ったらいいか?という具体的な施策を考えたり、研修体系なども協力して作ったりしてきました。また、女性の管理職は当初少なかったので、社外研修など色々なところで話をする機会にも恵まれました。


今後のキャリアを考えるうえで大学の経験が活きたこと

―今回の出向の経験が、今後社内で活きることもあると思いますが、いかがでしょうか?

先ほどお話させていただいたSDGsのカードゲームについては、ファシリテーションの資格も取ったので、実施していくことと思います。あとは、イノベーションがどうやったら生まれるのかというプロセスにはとても興味があって、企業でのイノベーションは個人の願いを統合することで起こるのではないかと思っています。イノベーションを起こそう!と気負うのではなくて、メンバーが心から願っていることを実現することがイノベーションを起こすことにつながるのではないかと思います。

―大手企業のエンジニアから大学への出向、そして今後の展望についても、いつも前向きにとらえ、できることを考え行動している増谷さんの姿が印象的でした。本日は、ありがとうございました。

取材日 2019年12月26日

プロフィール

株式会社ブリヂストン
事業開発企画本部
増谷 真紀さん(株)ブリヂストンに新卒入社後、工業用品開発部で設計開発~品質保証までを担当。その後、研究開発部門へ異動したのち、管理職になった後ダイバーシティ推進室主任部員を兼務。2017年にブリヂストンとお茶の水女子大学が結んだ包括的連携協定により、2018年から、お茶の水女子大学に客員准教授として出向し、未来のリーダーを育成するプログラムを企画・実行。

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