2020.08.27 ストーリー
シニア人材役割創造調査研究 #01
シニア人材の活躍促進に必要なアプローチとは
~"役割創造モデル"調査研究から見えてきたこと~
組織内で活躍し続けているシニア人材はどのように役割を創り出し、パフォーマンスを上げているのか?その要因を明らかにするため、法政大学大学院石山恒貴研究室と共同で調査研究を行いました。
調査概要
内容 | 活躍しているシニア人材(役職定年者・定年再雇用者)とその上司に対するインタビュー調査を実施し、活躍のメカニズムを解明する |
---|---|
対象 | 人事部が「職場の中で役割創造している定年再雇用者(※以下再雇用者)、又は、役職定年者」として人選した21名とその上司18名 |
時期 | 2019年2月~2019年7月 |
方法 | 対象者へのインタビュー調査 |
調査主体 | 株式会社ライフワークス、法政大学大学院政策創造研究科石山恒貴研究室 |
用語の定義 | 「役割創造」 組織において、自ら置かれた環境を理解し、これまでの経験や学習から仕事の意味づけを行い、組織内で新たな役割を作り出し、パフォーマンスを上げている状態 |
再雇用者に関する調査結果サマリ
再雇用者の活躍は個人特性によるものだけではなく、そこには上司の関わりが非常に重要であるということが確認できました。
※役職定年者への調査も行っていますが、ここでは再雇用者の調査内容にフォーカスしてお伝えします。
調査結果1 再雇用者が役割創造に至るプロセス
再雇用者の方が定年後に活躍するまでに、4つの段階があることが分かりました。
第1段階:定年の節目でニュートラルゾーンを経験する
ニュートラルゾーンとは、定年退職という節目を迎えた再雇用者の心理的な葛藤を指します。再雇用者は、給与の低下や現役世代へのもどかしさ、年下上司とのやりづらさや周囲への遠慮など、様々な葛藤を抱いています。
第2段階:現状を受け入れ、経験の棚卸を行う
再雇用者は、現状を受け入れつつ自身の棚卸をするステップを踏んでいます。複雑な思いを抱きながらも徐々に現状を受け入れています。
第3段階:自己調整する
発言や発信の工夫をする等の「コミュニケーションの量・質の調整」を行います。これを「自己調整」と言います。周囲と調和することで「自らを受け入れてくれる環境」が生まれ、再雇用者のモチベーションが安定します。
第4段階:現役世代に貢献する
現役世代ではできない仕事に自ら着手し貢献します。今回この段階を再雇用者の役割創造と定義しました。
調査結果2 再雇用者の役割創造を後押しする上司の行動
再雇用者が役割創造に至るプロセスの中で、上司の関わり方が大きく影響することが明らかになりました。
3つの有効な行動
- 再雇用者のこれまでの経験や専門知識に合う「職務の切り出し」と「仕事のマッチング」
- 再雇用者に対して、基本的な仕事の方針だけを示し、ある程度裁量を与えるマネジメント
- 再雇用者だからこその仕事を付与
4つのスタンス
- 再雇用者の経験とスキルを高く評価している
- 人材育成への関心が高い
- 再雇用者とのコミュニケーションを重視する
- 再雇用者の職場での状態を観察する
提言:役割創造を促すための、短期・中期・長期での再雇用者への働きかけの方向性
短期
再雇用者がニュートラルゾーンに入ったタイミングで、上司は対話を通して再雇用者の棚卸を支援する。そのなかで再雇用者と役割を発揮する方向性を握り、それを職場内に周知をする。
中期
以下の3点を意識した職場づくりに継続的に取り組む。
- 職域開発をする
- 組織横断的なテーマを与える
- 個々の専門性を把握し活用する仕組みを構築する
長期
活躍の場や選択肢を増やすための越境経験を、シニア期を迎える前から徐々に取り入れる。社外でも通じるという意識をもつことで、将来の選択肢が増え、それが能力開発を促進することにも繋がる。