「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2017.11.27 支援者の取り組み

「丸の内プラチナ大学」がつくる、40〜50代の新たな学びと挑戦をサポートするキャリア講座

「丸の内プラチナ大学」がつくる、40〜50代の新たな学びと挑戦をサポートするキャリア講座

東京・大手町の一角で、40〜50代を中心としたビジネスパーソンの新たな学びと挑戦をサポートするキャリア講座「丸の内プラチナ大学」が開かれています。現在進行形で起こっている社会課題について考えることを通して、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、参加者の様々な可能性を広げることを目指すというこの取り組みについて、運営事務局の一般社団法人エコッツェリア協会・田口真司さんにうかがいました。

リアルな社会課題をもとに、アイディアを生み出すプロセスなどを身につける

---丸の内プラチナ大学は2017年夏から第2期が開講し、「ヨソモノ街おこしコース」「観光おもてなしコース」など7つのコースがそれぞれ4〜8日間実施されているとのこと。どのようなことを目指して運営されているのでしょうか?

大きく2つの目的を据えています。1つ目は、40〜50代を中心としたビジネスパーソンの新たな可能性を広げること。ある程度経験を積んだビジネスパーソンが、その経験を生かして組織で再活躍したり、起業や地域・社会貢献をしたりできるようになるための学びと挑戦の場として講座を位置づけています。

2つ目は、身近で具体的な地域課題を通じて、課題の解決力や新たなアイディアを創出するプロセスを身につけること。いわゆるMBA的な紙に書かれたケーススタディで過去の事例を学ぶのではなく、リアルな課題を持っている人たちをゲストとして呼び、講師がファシリテーターとなってゲストの話を聞き出し、参加者がその話を自分ごととして考える内容にすることを重視しています。

「誰かがやるだろう」「世の中はこうなった方がいいよね」などとあたかも批評家のように客観論を言うのではなく、ゲストがぶつかっている課題と、参加者自身のこれまでの経験や現在の立ち位置を認識してもらった上で、「じゃあ、あなたは何ができますか?」と問いかけることを、ほとんどの講座でしていますね。

---参加者が考えた課題解決策を当事者にプレゼンする機会も設けていらっしゃるそうですね。

その通りです。例えば、「ヨソモノ街おこしコース」は、プチ移住や二地域居住を通じて街おこしの担い手になるべく、市町村の課題と挑戦を学び、解決に向けたプランを議論し、策定するという講座ですが、今期は福島県会津若松市、山口県山口市、茨城県笠間市でそれぞれ課題に取り組まれている方をゲストに呼んで話をしてもらい、参加者にビジネスプランを検討してもらいました。その上で、希望者は現地にフィールドワークに赴き、市長にビジネスプランをプレゼンテーションする機会も作っています。評価されれば市と協働して実現に向けて取り組める可能性もあります。


似た課題に興味を持つ人たちのネットワークづくりの場に

---参加者には、どのような方がいらっしゃいますか?

年齢層は40~50代が中心ですね。下は20代、上は70代の方もいらっしゃいますが数えるほどです。多くは企業にお勤めの方で、新規事業企画や経営企画などに携わっていらっしゃる方が多い印象です。中には、企業勤めはしておらず、ご自分で会社を経営していらっしゃる方もいます。男女比は8:2から9:1くらいで圧倒的に男性が多いですね。

目的は様々です。ここで得られることを、所属先の企業というよりは、別のことに還元したい、という考えで参加されている方が多い印象です。例えば、0期(2015年)と第1期(2016年)に開講していた「地域デザインコース」だと、「その地域の出身だから」とか、「その地域の出身ではないけれど、地方創生に取り組みたいので」などの理由で参加されている方がいらっしゃいました。

もちろん、企業に還元する目的でいらっしゃっている方もいます。例えば、「会社がこれから農業に参入してくので」と「農業ビジネスコース」を、「CSVやSDGsについて学びたいから」と「CSV実践コース」や「SDGsビジネスコース」を受講する方などですね。

ただ、皆が皆強い課題意識を持っているわけではなく、「なんとなく興味があって」という方から、課題感を持たれている方まで様々ですね。

---参加後に皆さんが持つ感想はいかがでしょうか?

「考えるきっかけができた」とおっしゃる方は多いですね。あとは「同じような考えを持っている人の存在を知ることができた」という方も。講座を開催している「3×3 Lab Future(さんさんラボ)」自体が、会社でも自宅でもない「サードプレイス(第3の場所)」として業種・業態の垣根を越えた交流・活動拠点を志向している場所ですから、受講後に「3×3 Lab Future」の個人会員になって普段から使ったり、「3×3 Lab Future」で開かれるイベントに来たりしたときに再会するという方もいらっしゃいます。また、SNSでつながりを保たれている方もいらっしゃいます。

社外で共通の課題に取り組む仲間というのはなかなか作りづらいものですから、受講者やゲストとのネットワークを作ることができるのが、この講座が評価されている点の一つだと思います。

---講師やゲストの方とつながり、次の展開に進んだような事例もありますか?

ありますよ。例えば、地域をテーマにしたコースにもともとその地域に住まわれている方やその地域の取り組みを手伝っている方が参加されて、自治体とのつながりがより深まった、という話を聞いたりはします。


企業の研修先としていかに活用してもらうかが課題

---今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか? 来期以降の課題などがあれば教えてください。

第3期に向けては、今実施している第2期の終了後に振り返りを行った上で、講座のラインナップから内容まですべて見直します。継続するものもあるでしょうが、刷新するものも出てくると思います。

全体的なところで大きな課題に感じているのは、参加者の広がりですね。特定の層へのアプローチが続いてしまい、新規の方が思うように増えていません。原因の一つとして、講座のわかりにくさ、言い換えるならば目に見えてわかるスキルが身につく講座内容ではないことが挙げられます。我々としては、企業に研修先として使っていただくことが参加者増にもつながると考えていますが、企業側としては「うちの社員を参加させることで、どういうスキルを得て帰ってきますか?」とまずは考えますから、なかなか講座の内容を評価していただけないんですよね。

私たちは、答えのない前例のない課題に対して解決策を生み出せる人を育てることを目指していますが、その考えをいかにして多くの方に理解していただくかが課題だと思っています。

---なるほど。そのほかの課題としては、いかがですか?

あとは、講座を通してゲストと参加者による新たなプロジェクトが生まれることが理想ではあるものの、実際にそうなったときに事務局はどこまで関与するのか、ということも検討課題の一つです。講座で検討した課題にビジネスとして取り組むとなると、誰がコストを負担するのか、儲けをどのように分配するのか、失敗した時に誰が責任を負うのか、などの論点が必ず発生します。そこまで私たち事務局が関与するのかどうか。

おそらくは、実践的に学ぶ場・機会を提供するにとどめるのだと思いますが、それだと参加者はいつまでも課題の外に立ったままになることも多いので、どのようにするのがよいか、難しさを感じていますね。

越境学習の場は、社外での活動のアイディアを確かめる場として活用できる

---最後に、企業で働くミドル・シニアの越境学習やキャリア形成のポイントについて、学びの場を提供されている立場からお聞かせ願えますか?

rc_s_171127_02.jpg新しいことにチャレンジしたり、社外でビジネスを始めたりする場合、いきなり始めてもうまくいくことはまれでしょう。必ず、準備期間が必要です。例えば、ビジネスのアイディアを持っているなら、それが当たっているかどうか確かめたり、CSVやSDGsなど今までにない考え方を自社内に持ち込みたいのであれば、社会性のある事業や活動と事業性との両立はどうすればいいのか考えたり...。そうやって試したり、知見を得たりした上で次のフェーズに持っていくのがいいと思います。

また、これからの働き方においては、特定の所属部署で上から降りてくる仕事をこなすのではなく、会社や部門横断するプロジェクト型の仕事が増えてきます。その時に重要な要素になるのが社外とのつながりです。社外とのつながりをもとに自分のやりたいことを持てていれば、社内に還元して活躍することも、社外に出て新たなキャリアを築くこともできるでしょうから。社外の様々な人とネットワークを持っておくことは、これからの社会では基本中の基本になると思います。

---新しい挑戦への準備期間として、あるいは、ネットワークづくりの場として、丸の内プラチナ大学は大いに活用できそうですね。

そうですね。私たちが丸の内プラチナ大学を始めるとき、「準備期間に活用できるものを」をテーマの一つに置いて講座を設計していきました。いきなり自力でやると失敗するかもしれないけれど、講座に参加して、現在進行形で課題解決に取り組んでいる人たちの横で一緒に走ってみて、「自分ならどうするだろう?」と考える。ここなら、これまでと異なる世界に少しだけ足を踏み入れることができるし、当事者ではないので失敗することのない状態でリアリティのある話が聞けて、自身のアイディアや考えを整理することができます。その上で、ここでの経験をふまえてその先の一歩を自分自身踏み出す。そんな場になるよう設計していますので、新しく考えているビジネスのアイディアが当たっているかどうか確認するなど、準備の場、ネットワークづくりの場として活用してほしいと思います。

プロフィール

丸の内プラチナ大学40〜50代を中心とし20〜30代を含めたビジネスパーソンの新たな学びと挑戦をサポートすること、課題の解決力や新たなアイディアを創出するプロセスを身につけることを目的に、2015年に設立されたキャリア講座。一般社団法人エコッツェリア協会、三菱総合研究所プラチナ社会研究会、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワークの3団体が事務局となり、大手町エリアにある交流施設「3×3 Lab Future」で開催されている。2017年は、第2期として4〜8日間のコースが計7コース開催された。
丸の内プラチナ大学のWEBサイトはこちら

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